図 国内の主要通信事業者のLTEサービス開始時期
図 国内の主要通信事業者のLTEサービス開始時期
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 LTE(Long Term Evolution)は、次世代の携帯電話向け高速無線通信規格のこと。国内では「3.9G」とも呼ばれてきたが、最近は海外を中心に「4G」と呼ぶことも増えてきている。

 LTEの仕様上の最大伝送速度は、下り300Mビット/秒、上り75Mビット/秒である。ただし、実際のサービスで利用できる最大伝送速度は、携帯電話事業者に割り当てられた周波数帯域幅や、基地局装置・端末の性能などによって変わる。

 国内で最初にLTEのデータ通信サービスを開始したのはNTTドコモである。「Xi」(クロッシィ)というサービス名で、2010年12月にスタートした。これに続いて2011年11月にはソフトバンクモバイルの関連会社であるWireless City Planning(WCP)が、2.5GHz帯でLTE互換をうたうAXGP(Advanced eXtended Global Platform)のモニターサービスを開始した。

 2012年には、ほかの事業者も含めて国内の主要通信事業者でLTEのサービスが出そろう(図)。まず2月には、ソフトバンクモバイルがWCPのMVNO(Mobile Virtual Network Operator)としてAXGPの商用サービスを開始する予定。続いて3月には、イー・アクセス(イー・モバイル)が1.7GHz帯でLTEの商用サービスを始める見込みだ。同社は2011年11月から、LTEネットワークを試験運用している。その後、12月にはKDDI(au)が1.5GHz帯と800MHz帯でLTEサービスを開始する予定である。

 なおLTEに周波数を割くことによって既存の3Gユーザーのトラフィックが影響を受けないよう、KDDIは「EV-DO Advanced」という技術を2012年4月にも導入すると発表している。EV-DO Advancedでは、ある基地局のセル内で通信が混みあった際、電波品質の悪い端末の通信を空いている隣接基地局のセルにハンドオーバーさせる。

 一方、先行するNTTドコモは、2012年に自社のLTEサービスを強化する方針だ。対応エリアを随時拡大するほか、2012年10月から2013年3月をめどに、従来の2GHz帯に加えて、1.5GHz帯でもLTEサービスを提供する見通しだという。

 実はLTEにはFDDとTDDという二つの方式がある。FDDは異なる周波数帯域のペアを、それぞれ上りと下りの通信に割り当てて利用する。TDDは上りと下りで同じ帯域を利用する方式だ。TDD方式のLTEは「TD-LTE」とも呼ばれる。

 国内では既にNTTドコモがFDD方式を採用し、KDDI、イー・アクセスなどもFDD方式を利用する見込み。一方、AXGPについてはソフトバンクモバイルの孫 正義社長が2011年9月の新製品発表会で「TD-LTEと100%互換」と述べている。

 一般的には、TDDを採用した通信規格は上りと下りで同じ周波数帯域を使うので、伝送路の電波特性を把握しやすい。そのためTDDではビームフォーミングなど電波特性を利用したアンテナ制御技術の効果を、FDDより得やすいといわれる。一方で、TDDは隣接基地局のセル同士で上りと下りの通信タイミングを厳密に同期させないと、干渉が起こりやすくなるともいわれている。