M2M(エムツーエム)は、機械同士が人間を介さずにIPネットワークを経由して情報をやり取りする通信形態のこと。あるいは、それを実現するための技術を指す。もともとはMachine to Machineの略語である。

 ここでの機械は、パソコンや携帯端末よりもむしろ、工場の工作機械、ビルの空調システム、監視カメラ、自動販売機、POSレジ、トラックやタクシーといったものが対象となる。こうした機械にセンサーや通信機器を取り付けて相互に連携させたり、遠隔にあるサーバーで一元管理したりする。これによりエネルギー消費の低減や物流の効率化を進められる。機械から得られる膨大なデータをクラウド上に集めて分析し、経営革新や業務改善、製品改良などに役立てるサービスも登場している。

 多くのM2Mシステムは、用途ごとに専用の製品・サービスを組み合わせて開発する。このシステムは主に、(1)機器やセンサー類、(2)機器の遠隔制御や機器からのデータ収集・分析に用いる業務アプリケーション、(3)機器と業務アプリケーションをつなぐネットワーク――などで構成される。

 M2Mシステムの現状の課題は、データをやり取りするためのプロトコルやデータフォーマットが、製品間やベンダー間で統一されていないことだ。そこで、M2Mに関する規格の標準化が世界的に進められている。例えばETSI(欧州電気通信標準化機構)は2011年内に機能面のアーキテクチャーや通信インタフェースの仕様を固め、標準規格の第1版をリリースする予定である。

 ETSI規格のポイントは二つある。一つは、機器と業務アプリケーションを連携させるためのプラットフォーム(ミドルウエア)を標準化すること。これにより、機器/アプリケーションの仕様の違いを吸収する。公開されたミドルウエアのAPIを利用して、業務アプリからM2Mシステムを制御することも可能だ。もう一つのポイントはネットワーク区間で、携帯電話や有線LAN、無線LANなど種類を問わず使えるようにする点である。

 こうした取り組みを先取りする動きも活発になってきた。NECや富士通が2011年から本格的に、M2M向け汎用プラットフォームをクラウドサービス上で提供し始めた。国内のITベンダーや通信事業者など約70社が参加する業界団体「新世代M2Mコンソーシアム」でも、製品・サービス間の相互運用性を高めるための試験を実施している。