BYODとは、「Bring Your Own Device」(自分のデバイスを持ち込む)の略で、従業員が私物の端末を企業内に持ち込んで業務に活用することを指す。自分の飲み物を持ち寄る「BYOB」(Bring Your Own Bottle/Booze/Beer)という、以前から使われていた言葉をもじって作られたと考えられている。

 私物の端末を企業内での業務に使うという動きは、数年前から米国を中心に海外で盛んになってきており、日本でも一部の企業が取り入れ始めた。

 こうした動きの背景には、いくつかの要因が考えられる。一つは、パソコンと同等の機能を備え、どこででもネットワークに接続できるスマートフォンやタブレット端末の普及がある。これらの私物端末のほうが、企業で支給される従来型のフィーチャーフォンよりも高性能であるケースは珍しくない。もう一つの要因として、端末の種類を問わずに利用可能なクラウド型サービスの普及が考えられる。

 BYODには、いくつものメリットがある。まず従業員が自分の使い慣れた端末で、情報管理を一本化できるため、業務効率の向上に結びつくという点。この環境を自宅や出張時に活用することで、使い勝手の良い在宅・遠隔勤務環境を構築できるというメリットもある。企業が従業員に端末を支給せずに済むため、コスト削減につながるという点も挙げられるだろう。

 その一方で、企業のネットワーク/システム管理者にとってはセキュリティ上の懸念があるからこそ、これまではうかつに私物端末の利用を許可できなかった。しかしここにきて、私物端末を企業内でも安全に、かつ利便性を失わせない形で利用可能にするツールが相次ぎ登場している。

 その代表例が、BYOD環境の構築を支援する機能を備えた無線LANシステムである。米シスコと米アルバネットワークスがそれぞれ無線LANコントローラーと管理サーバーをセットにして提供している。このシステムでは、ユーザー、端末の種類、アプリケーションの種類、場所などの総合的な情報をポリシーと照らし合わせ、適切なアクセス制御を実施する。

 企業の機密情報を入れたスマートフォンやタブレット端末を落としたり盗まれたりして情報漏洩を引き起こす懸念もある。この場合には、リモートから端末の情報を削除したり端末にロックをかけたりできる「MDM」(Mobile Device Management)と呼ぶツール/サービスが有効となる。

 こうしたシステム面での対策のほかにも、私物端末による業務活動を前提とする場合、端末購入費や通信費に対してある程度の補助が必要となってくるだろう。