Wi-Fi Directとは、Wi-Fiアライアンスが策定した最新の無線LAN規格である。Wi-Fiアライアンスは2010年10月に、Wi-Fi Directの認定プログラムを開始した。

 Wi-Fi Directが従来の無線LANと大きく異なるのは、アクセスポイント(AP)を経由せずに、直接相手の機器に接続してデータをやりとりする点だ。従来は、APを使ってパソコンをネットワークに接続するのが一般的だった。このため、通信したい機器が目の前にあっても、ユーザーはまずAPを探して、パソコンをアクセスポイントに接続しなければならない。APを設置する際は、パソコンをつないで設定する手間が要る。

 Wi-Fi Directなら、APがない場所でも、手軽にデータを目の前の無線LAN機器に送ることができる。APにパソコンをつないで設定するといった作業も必要ない。こうした特徴を生かし、デジタルカメラで撮影した画像をフォトフレームに直接送信して表示したり、プリンターに直接送信して印刷したりする─といった用途が考えられている。

 Wi-Fi Directでアクセスポイントを使わずに通信できるのは、機器自身がAP機能を内蔵するためだ。複数のWi-Fi Direct機器のうち1台がAPの働きをする。APの役割を果たす機器を「グループオーナー」と呼ぶ。グループオーナーが提供するAP機能は、従来のAPとほぼ同じだ。ほかのクライアントからは通常のAPと同じように見える。このため、Wi-FiDirectをサポートしない通常の無線LANクライアントもグループオーナーに接続できる。

 2011年5月時点で、Wi-Fi Directの認定を受けた機器は約80製品ある。例えば、テレビやホームシアターシステム、携帯電話、タブレット端末などが認定されている。今後は、Wi-Fi Direct 向けのアプリケーションを搭載したプリンターが登場する見込みだ。ただし、ユーザーがWi-Fi Direct対応の製品かどうかを知るには、製品の仕様をチェックする必要がある。Wi-Fi認定を受けた製品はロゴで見分けが付くのが一般的だが、Wi-Fi Directに関してはそういったロゴが用意されていないからである。