米Vyatta社が開発を進めるLinuxディストリビューション。WANルーティング、ファイアウォール、フィルタリングなど、ルーターとしての用途に特化した仕様になっている。クラウドコンピューティングが普及したことで、商用ルーターを置き換えるものとして注目を集めている。システム構成を柔軟に変更できるクラウドコンピューティングでは、ハードウエア製品よりもソフトウエア製品の方が親和性が高いからである。

 製品名のvyattaは、古代から中世にかけてインドや東南アジアで使われていた「サンスクリット語」からとったもので、「オープン」という意味を持つ。その意味するとおり、多種多様なオープンソースを組み合わせて構成されている。主なオープンソースのアプリケーションは、ルーティングデーモンの「Quagga」、ファイアウォールやNAT(ネットワークアドレス変換)機能を持つ「iptables」、IPS(不正侵入防止システム)やURLフィルタリングを実行する「Snort」などである。

 ベースはDebianだが、CLI(コマンドライン・インタフェース)は独自仕様となっている。独自のCLIを採用することで、上記に挙げたアプリケーションを通常のDebianで利用する場合よりも使いやすくした。Linuxサーバーの運用経験を持たないネットワーク管理者であっても、商用ルーターとほぼ同じコマンド体系で管理できる。

 ライセンス体系は、非商用版の「Vyatta CORE」(CORE)、商用版の「Vyatta Subscription Edition Software」(SE)、商用版を機能拡張するアドオンの有償サービス「Vyatta PLUS Services」(PLUS)の3つに分かれている。SEにはCOREの機能を含む。このうち無償で利用できるのは、非商用版のCOREである。ルーティング、ファイアウォール、NAT(ネットワークアドレス変換)、VPN(仮想私設網)、IPS(不正侵入防止システム)、URLフィルタ、QoS(サービス品質)、WAN回線の負荷分散、IPv6対応などの機能を持つ。既存の商用ルーターが備える機能は、ほぼすべてデフォルトで利用できる。

 非商用版であるCOREをサポートするため、コミュニティサイト「http://www.vyatta.org/」が開設されている。また、日本国内ではVyattaユーザーの有志が「日本Vyattaユーザー会」(http://www.vyatta-users.jp)を開設している。