文・大林 勇人(NTTデータ経営研究所 シニアコンサルタント)

 インターネット中継とは、会議や音楽ライブ、スポーツ中継といったイベントの映像を動画データの形式で録画した上、インターネット上で不特定多数のユーザーにリアルタイムで一斉配信するサービスや技術の総称です。一般に、映像情報がリアルタイムで配信された後もユーザーがいつでも気軽に再生して視聴が可能なビデオ・オン・デマンド(VOD)またはビデオライブラリと呼ぶ機能も提供しています。

 国内で1995年に普及が始まったインターネットは、当初は回線速度がネックとなりテキスト情報を主体とした情報の提供にとどまっていました。しかし2000年以降、ブロードバンドサービスの本格的な普及に伴い、大量・高解像度の静止画、動画などの提供が可能になってきました。

 さらに、ファイルサイズが大きい動画データを一度に配信・再生するのではなく、少量ずつ配信・再生するストリーミング技術の進化により、これまで以上に多数のユーザーが同時に動画データにアクセス可能となることで、インターネット中継が従来よりも容易に実現できるようになってきています。

公的機関によるインターネット中継

 近年、行政などの公的機関でも、このようなインターネット中継を活用するケースが増えつつあります。具体的には、国会などの議会中継、行政機関の長の会見、地域のイベント中継といった分野でインターネット中継による映像情報のリアルタイム配信が実現されています。

 代表例の一つは、2005年11月に開設された内閣府の「政府インターネットテレビ」です。政府インターネットテレビは総理大臣や内閣官房長官の会見をリアルタイムで中継しており、東日本大震災での臨時記者会見でも活用されています。

 国での代表的な活用例としては、衆議院の「衆議院TV」と参議院の「インターネット審議中継」も挙げられます。両サービスとも審議をリアルタイムで視聴できるほか、ビデオライブラリ機能を備えており、過去の審議を開会日、会議名、案件名、発言者名などから検索して視聴することが可能です。

 ただし、インターネット中継を実施するには、映像を撮影するためのビデオカメラおよび録画機器、動画データを記録・配信するためのサーバーといった機材や設備の準備に相応の投資を行う必要があります。いずれも外部のサービスを利用することもできますが、その場合でもコストが発生します。