マイグレーション(migration)とは、「移住」「移行」などの意味。IT分野では、新しいプラットフォームに移行する意味で用いられる。PSTNのマイグレーションは、NTT東日本/西日本(NTT東西)が2010年11月2日に発表した、PSTN(Public Switched Telephone Network)からIPへの移行計画を指す。

 PSTNは一般加入電話サービスなどを提供するための電話網のこと。ユーザー宅内にある電話機につながる銅線は、宅内の配線や電柱などを経て、NTT東西の局舎に収容される。PSTNは局舎よりもバックボーン側にあるコアネットワークだ。インターネットがルーターをつないだネットワークであるように、PSTNは交換機などをつないだネットワークである。ユーザー宅から局舎まではアクセスネットワークと呼ばれ、PSTNとは区別される。

 NTT東西では2020~2025年をめどに、PSTNをIPネットワークに移行する方針だ。今から10年後の2020年頃までにPSTN上で提供しているサービスを整理してIPネットワークへの切り替えを始め、2025年頃までに完了する。

 これまでNTT東西は、PSTNを構成する交換機のメンテナンスを続ける一方、インターネット接続用のIPコアネットワークも運用してきた。今後、通信の世界はIPネットワークが主流になるとみられる。このまま2種類のネットワークを運用し続けるのは効率的でないため、IPに一本化する。

 現在PSTN上で提供しているサービスの一部も、順次終了する予定だ。例えばISDNサービスの「INSネット」など、13種類を2025年頃までに廃止するとしている。また利用者が減っているサービスは、2020年頃までに終了する。2010年11月の発表では「接続通話サービス(コレクトコールなど)」といった8種類の名前が挙がった。なおINSネットは2010年3月末時点で約470万件の契約がある。非常にユーザーが多いが、「主な用途はFTTHなどのサービスで代替可能なため、終了することにした」(NTT東日本 広報)。音声サービス、公衆電話、110(警察)/119(消防)など基本的なサービスは、PSTN廃止後も、IPネットワーク上で継続していく方針だ。

 PSTNのマイグレーションに関しては、まだ決まっていない点も多い。PSTNの廃止はコアネットワークの変更だが、ユーザーにも影響が出る可能性がある。例えば、既存の電話機を使い続けるためにアダプターを導入したり、電話機を置き換えたりする必要が出てくるかもしれない。NTT東西は既存のユーザーが不利にならない形で移行を進めるとしているが、料金負担などの詳細は現時点ではわからない。