商品やサービスの売り上げから一部を慈善事業に寄付するマーケティング。消費者の支持を集めて売り上げが伸びたり、ブランド価値の向上につながったりする効果がある。

 もう1つの「CRM」をご存知ですか。一般的には「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」を指しますが、近年はコーズ・リレーテッド・マーケティング(CRM)の頭文字としての認知度が高まっています。この場合は、売り上げの一部を慈善事業などに寄付することを前提にした商品やサービス、もしくはその販売活動を指します。コーズEマーケティング(Cause Marketing)やCSR(企業の社会的責任)マーケティングとも呼ばれます。コーズは、「原因」ではなく「大義」や「主張」ととらえるべきでしょう。 

 1981年にアメリカン・エキスプレスが行った、消費者がクレジットカードを利用するごとに1セントを自由の女神像修復のために寄付する、というキャンペーンが先駆けだといわれています。同社は新規の登録やカードの利用額を伸ばすと同時に3カ月で170万ドルを寄付しました。

 近年CSRを重視する企業は増えているものの、厳しい不況下ではメセナ活動をする体力が乏しくなっています。このため社会貢献にも費用対効果が求められており、収益拡大や企業ブランドの向上を図るCRMの重要性は高まっています。

効果◆インナーブランディングの効果も

 企業、消費者、社会の「三方良し」が理想です。企業にとっては趣旨に賛同する消費者による売り上げ増や、社会貢献の姿勢を打ち出すことによる企業ブランドの向上、さらには従業員の会社への誇りが高まるインナーブランディング効果も期待できます。

 資金の提供を受けるNGO(非政府組織)などの団体は、金銭面での協力を得られるだけでなく、対象の商品やキャンペーンを通じてその存在や活動が広く知られるようになるというメリットもあります。

 消費者にとっては購入が自らの意志や思想を表明する手段になります。例えば、2006年10月に米アップルコンピュータは特別版の「iPod nano」を販売しました。1台売り上げるごとに同社は10ドルをエイズ対策の基金「プロダクトRED」に寄付。基金名にちなんだ赤色の機種は、同基金を支持する証になるわけです。参画している企業はいずれも対象商品を赤色にしています。

事例◆王子ネピアは東ティモールを支援

 王子製紙グループの王子ネピアは開発途上国の水と衛生の環境改善を目標にした「nepia 千のトイレプロジェクト」を2008年に始め、同年はキャンペーン期間中の売り上げの一部である2043万7281円をユニセフに寄付しました。2009年は9~12月に展開する予定です。東ティモールに1000の家庭用トイレと5つの学校のトイレ、給水設備の建設または修復を目指します。