基本サービスを無料で提供してまず顧客を集め、有料の付加価値サービスを提供することで収益を上げるビジネスモデルを指す。米ベンチャー・キャピタリストによる造語。

 フリーミアムという言葉は、「フリー」と「プレミアム」から作られた造語です。無料(フリー)サービスでたくさんの見込み客を集めておき、割増料金(プレミアム)が必要な付加価値サービスを提供することによって、収益を上げるビジネスモデルを意味します。

 この言葉は、米国のベンチャー・キャピタリストであるフレッド・ウィルソン氏が2006年に自身のブログを通じて提唱したのが始まりです。その後、米国の著名IT(情報技術)誌「ワイアード」が積極的に誌面で使用したことなどで有名になりました。

効果◆適切な層を集める

 現在米国を中心に、フリーミアムという概念は大いに注目を集めています。きっかけは、ワイアード編集長、クリス・アンダーソン氏の著書『FREE(フリー)』が2009年7月に発売されたこと。フリーミアムについての記述が多数あり、著名人や識者のブログ、IT関連メディアで議論の的になっています。同氏は「ロングテール」の提唱者としても有名です。

 アンダーソン氏は今回の著書の中で「インターネットの台頭によってデジタル化できる商品は遅かれ早かれ無料に近づくため、メディアやIT企業、ゲームや音楽などのエンターテインメント会社はビジネスモデルを抜本的に見直す必要がある。無料化の影響は他業界にも及ぶ」という趣旨の話をしています。そして、新たなビジネスモデルとして挙げているのがフリーミアムなのです。フリーミアムモデルには、機能限定でフリー、期間限定でフリー、特定顧客層だけフリーなど複数のタイプがあります。

 フリーミアム戦略は、適切な無料ユーザー層を集め、その一部を有料サービスに戦略的に導くことが大切です。単に無料サンプルを配布して見込み客を増やすのではなく、顧客を魅了する無料サービスと有料サービスの内容の境目を見極め、損益分岐点をしっかり考慮して有料サービスへの目標転換率を設定すべきなのです。また既存のビジネスと比べて、はるかに幅広い顧客層を相手にする点にも注意が欠かせません。

事例◆便利さを体感させる

 米グーグルのウェブメールサービス「Gmail(Gメール)」や米ヤフーの「ヤフーメール」は、フリーミアムの一例と言っていいでしょう。Gメールもヤフーメールも誰でも無料で利用できますが、割増料金を支払えばメールボックスの容量を拡張できます。もっともこの2つのビジネスが、単体で利益を上げているかどうかは不明です。

 日本マクドナルドが2009年7月に地域限定・期間限定で8~9時のコーヒーを無料にしました。これも新規顧客を呼び込み、コーヒー以外の商品の注文を促すフリーミアム戦略の試行例と呼べそうです。