2009年2月17日に米国で成立した景気対策「米国復興・再投資法」の総額は7870億ドル(約75兆円)。このうち190億ドル(約1兆8000億円)もの予算が医療IT(情報技術)向けに計上されました。米国の医療費はおよそ年間200兆円、国内総生産の2割弱にまで達しています。医療機関へのIT導入をテコに、重複診療や無駄な投薬などを無くそうとしているのです。

 このなかで個人が健康情報を自己管理するITの仕組みであるPHR(個人健康記録)が注目されています。記録する情報は診療記録や投薬記録に加えて、アレルギー情報や、家庭用医療機器から吸い上げたデータ(体重、血圧、血糖値など)、主治医との電子メールなどです。投薬の安全性確認や、生活習慣病の予防・改善などに役立つとの期待があります。PHRを記録する公共的なシステムの運営母体としては既に米グーグルや米マイクロソフトが名乗りを挙げています。

 ただし、PHRの分析結果をITベンダーや医療機関が2次利用するときの法規制や、全国共通の個人認証手段など、検討課題も残されています。

 日本国内では経済産業省が中心になって「健康情報活用基盤構築のための標準化及び実証事業」を2008年度から3年間の予定で実施中です。その後にPHR関連のガイドラインが策定される見通しです。