固定通信と移動通信を融合させた技術およびサービス。1台の端末(電話機)を外線と内線の両方に利用できる。広義には電話だけでなく、データ通信分野も含める。

 社内の人に重要事項を連絡するために内線電話をかけたら、相手が離席中。「初めから携帯電話にかけるべきだった」と後悔した経験はありませんか。この問題は、常に携帯電話へ通話するように社内ルールを定めれば解決できますが、今度は通信料金がかさみます。

 このようなジレンマを解決する手段として、注目を集めているのがFMC(Fixed Mobile Conver gence=固定通信と移動通信の融合)と呼ばれる技術です。言葉の意味通りに、個々の携帯電話やPHSの端末(電話機)を外線だけでなく内線電話にも利用できるようにする仕組みです。広義には電話に限らず、有線と無線を融合させたデータ通信全般を指すこともあります。FMCサービスは通信事業者各社が数年前から提供しており、採用する企業が最近になって増えてきました。

効果◆携帯電話で内線が可能に

 FMCの特徴は、利用者である従業員が特に意識することなく、個々の携帯電話機を社内の内線電話用端末として利用できることです。社内のどこにいても内線扱いになるため、かける側は相手が離席中かどうかを悩む必要がなくなり、通信料金も発生しません。外出中は通常の携帯電話として利用できます。構内交換機に必要な設定を施せば、内線番号で外出中の従業員を呼び出すこともできます。

 こうした特徴は「構内PHS」と呼ばれる従来の仕組みでも一応は実現できました。ただし構内PHSは原則的に構内交換機を自社運用する必要があり、管理に手間がかかりました。FMCでは構内交換機の機能を通信事業者が代行運用してくれるサービスを利用でき、管理の手間は心配いりません。

 利便性が高いFMCサービスですが、制約もあります。例えば通信事業者に構内交換機の運用を委託する場合、利用できる機能が制限される恐れがあります。現状ではFMCに対応できる携帯電話の機種が少ないため、新たに従業員用の携帯電話を導入する初期費用がかさむケースもあります。

事例◆かけ直しを一掃

 千葉県などでスーパーマーケットを展開するワイズマート(千葉県浦安市)は2007年12月、本社と同じ敷地内の店舗にNTTドコモのFMCサービス「ビジネスmoperaIPセントレックス」を導入しました。

 従来は社内や店舗内に内線固定電話を設置していましたが、従業員が倉庫に出向くなどして離席することが多く、取引先などから電話を受けた際の取り次ぎやかけ直しが頻繁に発生していました。FMCの導入後は担当者が保有する携帯電話あてに直接かかるようになり、このような手間が解消されました。