トヨタ流改革における、働きやすい環境を整えるための基本的な要素。「整理、整頓、清潔、清掃、しつけ」の5つを指す。生産や営業など様々な組織で実践されている。

 トヨタ流改革は生産現場だけでなく事務部門や流通、サービス企業でも取り入れられています。「なぜなぜ5回」「かんばん方式」「ジャスト・イン・タイム(JIT)」と並んで有名なのが5Sです。「整理、整頓、清潔、清掃、しつけ」を指し、それぞれが職場環境を改善するうえで大切な要素です。

効果◆利益増に寄与

 「整理」は現場において要るものと要らないものを分けて、後者を処分することです。使わなくなった工具や長年誰も読んでいない書類などを手元に置くのではなく廃棄したり、まとめて倉庫に保管したりします。

 整理した結果、残ったものは業務に必要なはずです。それらを使いやすい場所にきちんと置くことが「整頓」です。使用頻度や作業手順を考慮して誰でも分かるように整頓ルールを定めなければなりません。

 整理、整頓が行き届いても働きやすい職場へは道半ばです。例えば、使い終わった工具が所定の位置に片付けられていても油まみれのままだったりしたら駄目です。必要な時にすぐに作業ができるように「清掃」して、職場環境を正常な状態にしておくことが欠かせません。整理、整頓、清掃がされた職場環境を維持するための活動や工夫が「清潔」ということになります。わざと汚れが目立つような壁の色にして気をつけたり、毎日退社時に机の上に何も置かないように片付けたりといった取り組みです。

 最後の「しつけ」は、職場環境を改善するうえで大切な5Sに関するルールを各自に徹底していくことです。あいさつや身だしなみまで含めて規律を高めて、組織の一体感を醸成します。

 5Sがトヨタ流改革の基本と呼ばれるのは、徹底すれば様々な無駄が洗い出せるからです。探し物の時間や過剰な在庫が無くなれば、品質や生産性は向上します。必要な工具が常に決められた位置に置いてあり、整備してあれば事故も減ります。ただし、根気強く続ければ確実に効果が生まれる5Sですが、リーダーの関与がなくなれば頓挫してしまうこともあります。チェックリストを使った定期検査を繰り返して組織的なPDCA(計画・実行・検証・見直し)を回すことが重要です。

事例◆作法を加えて6Sにアレンジ

 カイゼン活動の基本である5Sは、様々な企業で独自のアレンジが加えられて実践されています。日本電産グループの「3Q6S」活動は、「良い社員、良い会社、良い製品」の3つのQuality(品質)と、5Sに「作法」を加えた6つのSを指します。経営幹部が各職場を回って3Q6Sを点数で評価する監査も行っています。