図 2.4GHz帯・5GHz帯のISMバンドと、その周辺の帯域
図 2.4GHz帯・5GHz帯のISMバンドと、その周辺の帯域
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 ISMバンドとは、産業・科学・医療分野で汎用的に使うために割り当てられた周波数の帯域(バンド)のこと。国際電気通信連合(ITU)によって取り決められている。業務用の無線通信では無線局や無線オペレーターに免許が必要な場合が多いが、ISMバンドを利用するほとんどの機器に、免許は不要である。なおISMとは、Industrial, Scientific and Medicalの略である。

 この帯域を利用する無線通信システムには、Bluetooth(ブルートゥース)、無線LAN、アマチュア無線、DSRC(自動車のETCなどに使われる双方向無線通信)、各種レーダー、コードレス電話、ZigBee(ジグビー)などがある。

 様々な機器がこのISMバンドを利用するため、この帯域は「ノイズが多い」といわれる。そのためISMバンドは、「ダーティーな(汚い)帯域」と呼ばれることもある。もちろん、通信内容がダーティーなわけではない。多様な無線通信システムが同じ周波数帯を共用しているので、干渉しやすい状況にあることを示している。

 通信以外の用途でもISMバンドは使われる。電子レンジが発する電磁波が、その一例だ。「無線LANの通信が安定しなかったため、調べてみたら電子レンジの使用時だけ通信できないことがわかった」などというトラブル事例がよくある。その原因は、無線LANの電波と電子レンジの電磁波が干渉し、通信が不安定になっていたためだ。

 「ダーティーな帯域」でも通信を安定させるため、Bluetoothの場合は「周波数ホッピング」と呼ばれる技術を使い、ほかの機器との干渉の影響を抑えたりしている。

 2010年8月時点で、日本国内におけるISMバンドは六つある。なかでもよく取り上げられるのが、2.4G~2.5GHzの2.4GHz帯と、5.725G~5.875GHzの5GHz帯の二つ。図でオレンジ色で示した部分がそれで、ISMバンドで使われる用途や無線通信システムを赤色で示した。実に様々な無線通信システムがひしめき合っており、「ダーティー」さがわかる。

 二つのISMバンドのうちでより話題になるのが、2.4GHz帯のほうだ。というのもこの帯域には、IEEE802.11bとIEEE802.11gという、利用者の多い無線LAN機器があるからだ。そのためIEEE802.11b/gの無線通信では、「通信しにくい」「切れやすい」といったこともある。前述の電子レンジとの干渉によるトラブル事例などだ。

 一方の5GHz帯は、IEEE802.11aやIEEE802.11nが利用する帯域に近接しているが、重なってはいない。アマチュア無線や各種レーダーがISMバンドと一部重複する。