研究開発や設計、試作、量産など開発・生産のステージや商品が持つ機能ごとに、複数の企業が得意分野を受け持って商品を仕上げる生産方式のこと。

 垂直統合か、水平分業か──。メーカーは以前から、生産モデルの二者択一を迫られてきました。そして日本を代表する電機メーカーの多くは商品開発において、最上流の研究開発から設計と仕様決定、試作、量産(組み立て)までを一手に引き受ける垂直統合の生産モデルを採用してきました。

 垂直統合では1つの企業が開発・生産のすべてを受け持つので、多くの設備と人手が必要です。当然費用はかさみますが、大手メーカーが垂直統合にこだわってきたのは、得るものも大きいからです。自社ですべてを賄い、他社にはない付加価値を提供して市場シェアも利益も独り占めできれば、それに越したことはありません。すべてを手がけることが技術力の証しで、国産メーカーの強みでした。

 ところが、垂直統合に見直しの機運が高まっています。急浮上してきたのが、対極にある水平分業です。複数のメーカーが得意分野を持ち寄って、各社の強みを自由に組み合わせて商品を開発していく水平分業のほうが素早く顧客ニーズを満たし、かつローコストと考えられ始めたからです。

効果◆得意分野に特化すればリスクが小さい

 垂直統合に暗雲が立ち込め始めた原因は、デジタル家電の大幅な価格下落です。垂直統合はメーカーの初期投資が大きく、投資回収に時間がかかるので、一般にはハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルといえます。大きな見返りを期待して各社は垂直統合に突き進みましたが、昨今はそうもいきません。薄型テレビなどの値下がりは、メーカーの想定を超えたスピードで進んでいます。そこでメーカー同士が手を組み、各社が得意分野に集中することでリスク分散を始めたのです。

 デジタル家電よりも10年早く水平分業が主流になったパソコンは、特定分野に強みを持つ企業だけが勝ち残った歴史があります。企画やデザイン、マーケティング、SCM(サプライチェーン・マネジメント)などに特化して自社の強みを発揮したほうが利益を確保しやすくなったのです。デジタル家電もメーカー間の機能差が減ってくれば、一気に水平分業に移行する可能性が高まるでしょう。もっとも、水平分業は商品に問題が生じた時、原因究明に時間がかかるデメリットが付きまといます。

事例◆薄型テレビ業界でも台頭

 水平分業を先取りした米国メーカーの中には組み立てに強いアジア勢と組んで、低価格のデジタル家電を市場に投入する企業があります。水平分業を選択した米ビジオは低価格の薄型テレビで米国シェアを拡大し、日本メーカーの脅威になっています。