顧客の要望や属性、利用履歴などに基づいて、適切な商品を自動的に判断して薦めるシステムもしくはその仕組み。書籍や音楽CDなどの通販サイトで特に使われる。

 「この服にこれを合わせるともっとお似合いですよ」。ジャケットを選んでいるとネクタイの購入も薦められることがあります。ついでの買い物を増やそうとするものですが、顧客の好みを短時間で理解してぴったりの品を選べる店員は、かなり優秀な人でしょう。

 同じことをウェブサイトでやるなら高度な情報分析の仕組みが必要です。それがレコメンデーションです。

効果◆ついで買いを促す

 レコメンデーションは、ついで買いを促して購入金額を向上させる仕組みです。米アマゾン・ドット・コムのような通販サイトを中心に、導入が進んでいます。電動工具を購入する顧客の決済画面に、交換用の工具やねじといった関連商品を表示するのも該当しますが、音楽や映像のように趣味や嗜好が顧客一人ひとり異なる商品でこそ真価を発揮します。

 お薦め品を自動的に選ぶ仕組みには、顧客のプロフィールや購買履歴などを蓄積するデータベースのほか、レコメンデーションエンジンを導入します。

 レコメンデーションエンジンがお薦め品を選び出すルールをどう設定するのかには、かなり高度な情報分析力と仮説力、そして試行錯誤が必要でしょう。協調フィルタリングと呼ばれる手法が一般的です。過去の購買やウェブの閲覧履歴を判断材料にします。具体的には、居住地域、年齢や性別などの属性を重視してお薦め品を選ぶやり方もあれば、「この商品を購入した人はこうした商品も買っています」と、ほかの顧客の購買履歴を活用するやり方もあります。

事例◆メールを工夫して購買金額3倍に

 HMV ジャパン(東京・港)は2008年1月に新しいレコメンデーションシステムを稼働しました。顧客のページ遷移をリアルタイムに分析して顧客の嗜好に合った商品の情報を提供します。

 同社のレコメンデーションには、「カーネル法」と呼ばれるアルゴリズムを採用しています。カーネル法は商品同士のつながりに注目するもので、購入回数に応じてつながりの強さを数値化して隠れた関係性を明らかにするものです。約280万アイテムの商品を擁して、ニッチな趣味の顧客に幅広く対応するネット店舗の強みを効果的に活用しています。レコメンデーションは通販だけではなく実店舗への来客数増加にも貢献しています。

 2008年春からカード会員に対して、個々にお薦めの音楽CD情報などを盛り込んだメールを送付したところ、一般的な販促メールと比較して、購入率が3倍以上になる効果が表れました。

■参考文献
2009年3月号「成果出す業務革新の現場・HMVジャパン」