質問とそれに対する回答だけで進行する会議術のこと。上司などの大きな声の意見に惑わされず、主体的な気づきや結論を得られ、納得感が高まる。

 質問会議はその名の通り、質疑応答だけでやり取りを進め、問題の解決策を得る会議術です。NPO法人日本アクションラーニング協会(東京・港)の清宮普美代・代表が提唱したもので、主なルールは以下のようなものです。

 会議は「問題提示者」が中心となり、「ほかの参加者」が質問役になります。また、「アクションラーニングコーチ(ALコーチ)」を1人、進行役に決めます。4~8人で実施します。

 問題提示者は2~3分で「売り上げが増えない」といった問題を簡潔に説明します。次に、ほかの参加者は「お客さんはどういう人ですか?」「どれぐらいの頻度で訪問していますか?」といった質問をして、問題提示者が回答するやり取りを繰り返します。質問以外の「意見」を言うのは禁止です。質問が一通り終わったら、問題提示者は「問題の再定義」をし、その問題を解決するための「行動計画」を立てるなどします。

 この間、進行役のALコーチも意見は言いません。建設的ではない質問を繰り返す人がいれば、ALコーチは「この雰囲気はどうですか?」と質問して牽制するなどしながら、会議の場作りに徹します。

効果◆押しつけ・やらされ感を排除

 一般的な会議では、上司など権限の強い人や経験者が会議の流れを左右して結論を誘導することがよくあります。すると蚊帳の外に置かれた人たちは、決定事項に対して納得できない思いを抱きがちです。押しつけ感や、やらされ感があると、その結論が正しいとしても、問題解決に向けた行動につながりません。

 質問会議では参加者は対等です。発言機会も均等にあり、決定事項に対する納得感が高まりやすくなります。質問と回答に徹してやり取りすることで、気づきも生まれやすくなります。対話から行動意欲を引き出す手法としては「コーチング」もありますが、1対1など、少人数での対話が前提ですから、組織的に展開しようとするとコーチに負荷が大きくかかります。その点、質問会議は4~8人で行えるため、少ない負荷でコーチングに近い効果を得られます。

事例◆営業拠点に展開

 独系製薬大手の日本ベーリンガーインゲルハイム(東京・品川)は、質問会議を社内展開するため、営業担当者(MR=医薬情報担当者)のマネジャーにALコーチのスキルを習得させました。営業拠点で、部下のMRを集めて質問会議を実施し、気づきによる行動を促しています。医療費抑制の逆風にもかかわらず、同社の売上高は前年度比十数%の伸びを維持しており、その原動力になっています。

■参考文献
2009年3月号「成果出す業務革新の現場・日本ベーリンガーインゲルハイム」、『質問会議』(清宮 普美代著、PHP研究所)