伝染病が大流行した時に都市機能や企業活動などに支障を来さないよう、事前に立てておく計画や対策。新型インフルエンザ対策を表す言葉として頻繁に用いられる。

 全国的・世界的に特定の病気が流行することを「パンデミック」といいます。数年前からアジア地域を発端とする鳥インフルエンザの猛威が目立つようになったのをきっかけにして、その対策であるパンデミック・プランを立てておく動きが政府や自治体、さらに企業の間で顕在化してきました。

効果◆BCPの一部ととらえる

 パンデミック・プランは、伝染病の流行度合いに応じて段階的に立てておくのが一般的です。企業であれば、どの程度まで広がったら在宅勤務に切り替えるか、継続を優先すべき事業はどれか、といった具合です。

 世界保健機関(WHO)が2005年にインフルエンザの流行度合いを次の6段階に定めています。人への感染のリスクが高いウィルスが存在しない「フェーズ1」、動物に感染する新しいウィルスが確認できる「フェーズ2」、動物に感染するだけでなく人への感染の可能性もある新ウィルスが確認できる「フェーズ3」、人同士の感染が増加している証拠が見られる「フェーズ4」、かなりの数の人同士の感染が確認できる「フェーズ5」、人同士の感染が広範囲で継続的に進む「フェーズ6」─です。各国の政府はフェーズに応じて貿易や旅行に制限を設けることがあります。

 インフルエンザも大地震と同ように、実際に流行し始めてから対策を講じたのでは、企業活動に支障を来す可能性が高いのは明白です。従業員の2~3割が病床に伏す事態もあり得るからです。BCP(事業継続計画)を主テーマとしたビジネスパーソン向けのセミナーでも、最近は地震だけでなくインフルエンザを想定としたものが増えてきました。

動向◆厚労省の検討内容を企業も意識すべき

 WHOの動きと連動して、日本では関連省庁間で協議したり、厚生労働省内に新型インフルエンザ対策推進本部を設置したりして、パンデミック・フェーズに応じた医療体制の在り方などを検討してきました。例えば、サーベイランス(流行度合いの監視体制)、ワクチン生産体制、診断、治療、患者移送、検疫などのガイドラインを改訂し続けています。

 さらに、各都道府県がパンデミック・プランを立てています。東京都が2005年に発表したプランでは、日本の人口の25%が感染するようなインフルエンザが流行した場合は都民の30%に当たる378万5000人が感染し、29万1200人が入院、1万4100人が死亡する、と予測。対策を講じておかなければ、交通機関や通信など様々な都市機能に障害が発生し、経済活動への影響も計り知れません。企業にとってもパンデミック・プランの策定は重要な経営課題でしょう。