根本的な原因を把握し、解決するための問題分析手法。改善に当たって障害になる社内の慣習や方針といった制約条件を論理的に解決できる。

 思考プロセスは、TOC(制約条件の理論)の問題分析手法です。TOCの提唱者であるエリヤフ・ゴールドラット氏が著した『ザ・ゴール 2 思考プロセス』(ダイヤモンド社)でも主人公がたびたび活用しています。どんなに複雑な問題でも、思考プロセスを使って因果関係を解きほぐせば根本的な問題である「中核問題」にたどり着くことができ、さらには中核問題を引き起こす誤ったルールや行動習慣などを特定できるとしています。

効果◆対立を図式化

 思考プロセスは「何を」「何に」「どのように」変えるのかを明確にするために、まず「UDE(ウーディー=好ましくない結果)」を列挙し、それらについて「対立解消図」を作ることから始めます。

 3つほどのUDEについてそれぞれ対立解消図を作ります。好ましくない状態であるUDEと、本来あるべき行動とには、それぞれどんな行動理由があるのかを対立解消図に記入します。

 製品在庫の増加が問題になっている事例を念頭に具体例を示しましょう。「在庫が増えている」というUDEを引き起こす「在庫を増やす」という行動の理由としては、「すぐに納品してほしいという顧客の要望に応える」があります。一方で、本来望ましい行動は「在庫を減らす」ことであり、その行動理由は「コストを下げる」ためです。このように真逆の行動が現場には存在しますが、実はどちらも「企業としてもうけ続ける」という共通の目標を持っています。これを対立解消図で表現します。

 3つのUDEについて対立解消図を作ってから、共通する要素を検討し中核対立解消図にまとめます。そして解決する方策を考えます。このケースでは「顧客の要望に応えるには在庫を多く抱えるべき」という考え方が方針制約になりますが、「顧客の要望に応える前提条件は在庫をたくさん持つことだとは限らない」と考えてみます。例えば生産リードタイムを短縮して、顧客に直送する仕組みを作るといった解決策が考えられます。

 これ以後、何に変えるのか、どのように変えていくのかを未来構造ツリーなどに書き出します。

事例◆生産改革に活用

 思考プロセスを駆使して改革に取り組んでいるのが、日立ツールです。2000年からTOCを導入し生産改革に取り組んできました。達成したい目標を「製品の生産期間を7日以内にして、世界に通用するメーカーになる」と設定しました。目的達成を阻む障害を思考プロセスを活用して洗い出した結果、特定の工程における生産トラブルが多いことが生産期間短縮の中核的な障害だと特定しました。2007年末には一部のラインで7日の生産リードタイムを達成し、横展開を進めています。

■参考文献
2008年9月号「特集2・問題の掘り下げ力を鍛えよ!」