図 画面要素の種類を自動判別して転送するPCoIP
図 画面要素の種類を自動判別して転送するPCoIP
画面データのパターンを認識して、領域ごとにテキストやアイコン、ビデオといった種類に分類。各種類の特性に合わせてデータ転送の優先順位を付けたり、データを圧縮したりする。
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 「PCoIP」とは「PC over IP」の略で、カナダのテラデシが開発したデータ転送プロトコルである。米ヴイエムウェアが2009年11月に発表したデスクトップ仮想化システム「VMware View」の新版(バージョン4、VMware View 4)に採用したことで、注目を集めている。端末側の対応も進んでおり、2009年12月には米ヒューレット・パッカードがVMware View 4対応クライアントを発売。エルザジャパンはファームウエアの更新で同社の専用クライアントをVMware View 4に対応させた。なおVMware View 4は、これまで通りRDP(remote desktop protocol)も使うことができる。

 PCoIPには、(1)低帯域でも見栄えがよい、(2)3次元グラフィックスなどの画像処理に対応する――といった特徴がある。これらは図に示した画面データの処理によって実現している。まずPCoIPはディスプレイ出力をパターン認識して、テキストやビデオ、写真といった種類に分ける。そしてそれぞれに合った圧縮方法でデータを送り出す。このとき、表示が粗いと見づらくなるテキストやアイコンを優先して転送する(図のポイント1)。

 ビデオは、通信回線の帯域に合わせてフレームレートや圧縮率を調整する(図のポイント2)。帯域が狭いために動きが激しい部分が一時的に粗くなっても、帯域に余裕が出れば自動でその部分を書き換える(図のポイント3)。そして変化のない領域は、帯域を圧迫しないように画面を更新しない(図のポイント4)。

 元々PCoIPは、3次元グラフィックスや医療の分野で画像をリモート処理する目的で開発された。専用ハードウエアを使うことが前提だったが、ヴイエムウェアがテラデシと共同でソフトウエア版のPCoIPを開発。ヴイエムウェアが自社製品に採用した。