自社技術だけでなく他社が持つ技術やアイデアを組み合わせて、革新的な商品やビジネスモデルを生み出すこと。自社の研究開発力だけに頼るやり方と対比される。

 外部の開発力を活用したり、知的財産権を他社に使用させたりすることで革新的なビジネスモデルなどを生み出し利益を得る考え方をオープンイノベーションといいます。ハーバード・ビジネス・スクールのヘンリー・チェスブロウ助教授が提唱しました。社内だけで研究開発を完結するクローズドEイノベーションの対義語としています。

 従来、優秀な研究者を多数抱えて自社で自前主義で商品を開発することが大きな利益を得られると考えられてきました。

 しかしソフトウエアや通信機器など技術や市場の変化が激しい業界では、こうした自前主義の考えが必ずしも利益の最大化につながりません。他社と協業して儲かるためのビジネスモデルをいち早く構築して先行者利益の確保を図ったほうが競争優位を築ける場合が多いのです。

効果◆商品寿命が短くなる傾向に対応

 ヘンリー助教授の著書『OPEN INNOVATION──ハーバード流イノベーション戦略のすべて 』(産業能率大学出版部)によると、クローズド・イノベーションは20世紀までは機能していましたが、2つの要因によって価値が薄れてしまい、オープンイノベーションに移行する必要性が増しています。

 1つ目が優秀な人材を抱えたベンチャー企業の増加です。理工系の人材が大学など教育機関で得た知識を基に、ベンチャーキャピタルの支援を受けて起業することが以前よりは容易になっています。企業の研究開発部門は世界中のベンチャー企業を調査して、自社にとって有効な新技術を探し出して、組み合わせる能力が求められるようになりました。

 2つ目は開発期間を短縮する必要性の高まりです。基礎研究から自前で商品を生み出していては顧客のニーズや技術動向の変化に間に合わなくなってきました。

 こうした事情から1社だけでの研究開発は非効率となりました。企業内外のアイデアを組み合わせて、自社に最も利益をもたらす方法を考えたほうが効率的です。研究開発における企業の境界線が大きく変わったのです。

事例◆先端技術を外販

 ベンチャー企業だけでなく大企業からも、自社の特許を積極的に外部にライセンスして、オープンイノベーションに向けた協業に取り組む事例が出てきました。日産自動車は、2004年4月に知的資産統括室(現在はIPプロモーション部)を設置し自社内で開発した先端技術の外販に力を入れています。車載カメラの技術が潜水調査船に採用検討されるなどの成果が出ています。2007年度は、約20億円の売り上げを稼ぐまでに伸びてきました。