文・松山 浩也(NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティング本部 シニアコンサルタント)

 総合行政ネットワーク(LGWAN:Local Government Wide Area Network)とは、すべての地方公共団体を相互に接続する行政専用のセキュアなネットワークです。このLGWANというネットワークを介して、利用者である地方公共団体の職員に提供するASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスを「LGWAN-ASP」といいます。都道府県や市区町村といった地方公共団体が、限られた予算の中で行政サービスや事務処理を効率よく安全に電子化していくための一つの手段として利用が進んでおり、サービスも充実してきています。

総合行政ネットワーク(LGWAN)とは

 地方公共団体を相互接続するネットワークであるLGWANの歴史は古く、1999年に政府が決定したミレニアムプロジェクトで電子政府の基盤として挙げられ、e-Japan重点計画の中でも重点政策の具体的な施策の一つとして位置づけられました。2001年度に運用を開始し、2002年度には府省間を相互接続する霞が関WANと接続。2004年3月に全市区町村との接続が完了しました。 LGWANは電子政府・電子自治体の基盤であり、「総合行政ネットワークASPガイドライン」によると、その目的として以下の3点が挙げられています。

(1)行政事務の効率化・迅速化
 地方公共団体間の情報通信基盤として、地方公共団体間での情報交換、情報共有に加え、霞が関WAN と相互に接続し、より広範な情報交換、情報共有を実現することで、行政事務の効率化・迅速化を図る。

(2)重複投資の抑制
 個別の業務にとらわれない柔軟で汎用的な情報通信ネットワークを共通仕様の下に構築することで、地方公共団体におけるネットワークへの重複投資を抑制し、維持・運営費用の削減及び運用負荷の軽減を図る。

(3)住民サービスの向上
 住民生活に必要な行政情報の提供、申請・届出の手続きの電子化など、国と地方公共団体を通じて一体化された行政サービスを提供し、住民サービスの向上を図る。

 LGWANは、全国ネットワークオペレーションセンター(全国NOC)、都道府県ごと設置される都道府県ネットワークオペレーションセンター(NOC)、 及び地方公共団体が設置するLGWAN サービス提供設備により構成されます(図1)。全国NOCと都道府県NOCはLGWANバックボーン回線で接続され、都道府県NOCと各LGWANサービス提供設備はLGWANアクセス回線によって接続されています。高い安定性と機密性が求められるセキュアなネットワークとして、暗号化、ファイアウォール、侵入検知といったセキュリティ対策が講じられています。

図1●LGWANのネットワーク構成
図1●LGWANのネットワーク構成
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