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 Moblinは,超小型のノートPC,いわゆるネットブックやモバイル・インターネット・デバイス(MID)向けに作られたLinuxディストリビューションです。高速起動と軽快なユーザー・インタフェースを備えています。2009年9月24日に,Moblin 2.0が公開されました。

 Moblin 2.0はLinuxカーネルに,ネットブック向けの各種ライブラリやアプリケーションを搭載しています(図1)。「Linuxカーネル」「アプリケーション・サービス」「ユーザー・インタフェース」といった層構造になっています。

 アプリケーション・サービス層を構成するソフトは,ほとんどがオープンソースです。ウインドウ・システムの「X Window System」,3次元グラフィックス・ライブラリの「Open GL」,サウンド・サーバー「PulseAudio」,プロセス間通信ライブラリ「D-Bus」,HTMLレンダリング・エンジン「Gecko」などがあります。これらに加え,Webサービス・ライブラリ「Mojito」,位置情報サービス・フレームワーク「GeoClue」,マルチメディア・データ管理フレームワーク「Bickley」など新たなライブラリ類が入っています。

 ユーザー・インタフェース層には,GUIアプリケーションを開発するためのGUIツールキットやGUIライブラリがあります。「GTK+」「QT」などに加え,3次元ライブラリの「Clutter」が入っているのが特徴です。

 Clutterを使えば,最近のモバイル機器で流行っている,画面を指で触って移動したり拡大したりといった複雑で滑らかな操作が可能な3次元エフェクト付きアプリケーションを容易に開発できます。描画にはOpenGLを使いますが,「GObject」というGTK+に似たオブジェクト指向のAPIを採用しています。そのため,OpenGLの知識が無くてもスクリプト言語「JSON」を使ってユーザー・インタフェースを記述できます。

 Moblinは,動画や音楽再生の機能も備えています。アプリケーション・サービス層にマルチメディア・フレームワークとして「GStreamer」と「Helix」を組み込んでいます。GStreamerはシンプルな音声ファイルの再生から複雑なビデオ処理まで可能にします。Helixは,アプリケーション側でメディアのフォーマットを実行したり,OSやデバイスなどを意識しないままさまざまなマルチメディア・データを再生したりできる機能を備えています。

 Moblinでは,起動を高速化するために「Fast Boot」と呼ぶ仕組みを実装しています。Fast Bootは,電源を切ってからの起動を高速化する仕組みです。

 Moblinの特徴としてインターネット接続を一元管理する機能も備えています。インターネット接続を一元管理するデーモン「Connection Manager」で実現します。有線や無線などのネットワークをシンプルな操作画面で一元管理できます。