脳の仕組みを考慮し、五感を活用して効果的なコミュニケーションを実践する技術。1970年代に米国の心理学者と言語学者が協力して確立した。

 NLPは、米国で1970年代にリチャード・バンドラー氏とジョン・グリンダー氏が心理学と言語学を組み合わせて体系化したコミュニケーション技術です。人は視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を通して言語や非言語による外界の情報を受け取り、それを過去の体験などによって何らかの意味付けをしながら無意識に整理し、さらにそれを頭の中で言語に変換することによって理解したり他人に伝えたりできるようになります。NLPはこの一連のプロセスを効果的に行おうというものです。

効果◆会話の質を高める

 上司が同じ話を複数の部下に伝えたとします。しかし、聞き手の五感の使い方や情報の整理の仕方、言語化の仕方は様々なので、人によって話の理解度や記憶が少しずつ異なることになります。

 そもそも通常の会話では、話し手の言葉そのものよりも、話し手の表情や目線、姿勢、声のトーンやテンポなど非言語的な表現のほうが、聞き手に強い印象を残すといわれています。米国の心理学者アルバート・メラービアン氏が、言葉の影響力は全体の7%にすぎない、と提唱しているほどです。

 つまり、上司が部下と有意義なコミュニケーションを取るためには、部下が情報をどのように受けとめているかについて五感を使って察知しながら、言葉や表現方法を的確に選んでいき、部下の五感に訴えていくことが大切だといえます。

 NLPは、「キャリブレーション(相手の心理状態を表情や動作など言葉以外の要素から推察する)」「代表システム(視覚・聴覚・身体感覚のうちのどれを中心に物事をとらえる傾向があるか)」など、効果的なコミュニケーションスキルを定めています。

事例◆演説やモチベーション改善で活用

 NLPは、ベトナム戦争で心に痛手を受けた患者に語りかけるためにセラピストが活用し、成果を上げたことで広く認知されるようになりました。現在では、ビジネスパーソンやスポーツ選手などのモチベーション改善にも応用されています。元米国大統領のビル・クリントン氏の巧みな演説にもNLPが取り入れられていました。

 2008年1月に早稲田大学ラグビー部を大学日本一に導いた中竹竜二監督は、ピークパフォーマンス(東京・港)の平本あきお代表からNLPなどをベースに開発されたメンタルコーチングを受けています。中竹監督は平本氏によるコーチングを、様々な課題に対する自身の考えを整理するためだけでなく、選手のモチベーションを高めるためにも活用しています。平本氏のノウハウを参考にしながら、五感を駆使して選手の心理を深く読み取ろうとしているのです。