多数のウェブサイトでIDとパスワードを共通化する技術。利用者はあるサイトでOpenIDを取得すれば、ほかのサイトでも同じIDを使えるようになる。

 ウェブサイトに必要不可欠なのがログイン用のIDとパスワードです。利用者にとって、多数のサイトのパスワードを覚えられず、忘れては再発行を繰り返す人も多いことでしょう。サイト運営者にとっても、ID認証は不可欠な機能です。特に中小企業や個人がサイトを運営する場合は、機能の開発や不正ログインを防止するなどのセキュリティー対策が頭痛の種になります。相応のコストがかかる割に、それ自体は付加価値を生みません。

 そこで考え出されたのが、IDとパスワードを多数のサイトで共通化する技術規格であるOpenIDです。2008年に入って、「mixi(ミクシィ)」や「Yahoo! Japan」など国内の有力サイトが相次いでOpenIDに準拠し始めています。

効果◆ID管理を効率化

 OpenIDは「OpenID発行サイト」で発行されて「OpenID対応サイト」で利用できます。実際にはOpenIDはURLの形で発行されます。例えば、「userABC」というOpenIDを持つユーザーは発行サイトであるYahoo! Japanで「https://me.yahoo.co.jp/userABC」といったURLを取得します(実際は暗号化されたIDがURLになる)。次に、OpenID対応サイトであるブログサービスなどを利用する時には、このURLをログイン・フォームに入力すると、対応サイトは発行サイトにそのURLを通知して認証結果を受け取り、ログインを許可します。

 複数サイトのIDを共通化する動きは今に始まったことではありません。例えばMSNミュージック、MSNホットメールなどで共通して使える米マイクロソフトの「Windows Live ID」が有名です。従来の共通IDはあくまで特定ブランドだけを対象として顧客囲い込みの仕組みとして使われることが多かったのに対して、OpenIDは複数のサイト運営企業が協力した仕組みに発展しつつあるのが大きな違いです。

 ユーザー登録やパスワード入力などの煩わしさを解消することで、利用者を増やしやすくなると期待をかけるサイトの運営者がOpenIDの普及を後押ししています。

動向◆新たなサービス連携

 OpenIDの普及団体にはマイクロソフトのほか、米グーグルやヤフーなど、主要ネット企業が参画しています。OpenIDはネット上の顧客囲い込み戦略に一定の影響を与えそうです。

 OpenIDは新たなサービス連携を生む可能性もあります。例えば、発行サイトの1つであるmixiと組み合わせたサービスを開発して、mixi内で友人(マイミクシィ)と認定した信頼のおける人にだけ特定のサービスを提供する、といった事例が今後増えてくる可能性があります。