リモート・ワイプとは,携帯電話/PHS端末,スマートフォンやノート・パソコンなどが保持しているデータを,遠隔地から通信回線経由で消去したり,無効化したりする手法のこと。「ワイプ(wipe)」とは「ふく,ぬぐう」といった意味であり,もともとはスマートフォンの遠隔データ消去機能を表す用語として使われ始めた。主な使用目的はモバイル機器の紛失/盗難による情報漏えいを防ぐことである。通信事業者のほか,システム・インテグレータ,ソフトウエア・ベンダーなどがサービスを提供している。

 各社が提供するリモート・ワイプは,大きく三つの要素で構成する。(1)端末側ソフトウエア(携帯電話機/PHS端末は実装済みであることが多い),(2)サーバー側ソフトウエア,(3)通信回線――である。構成要素は同じでも,各社が提供するリモート・ワイプは,指示の反映方法やワイプの内容などが異なる。

 携帯電話/PHSではショート・メッセージ(携帯電話はSMS,PHSはライトメール)で消去などの指示を受ける。指示の内容は「アドレス帳削除」や「端末初期化」が一般的。NTTドコモやKDDIの一部機種では,外部メモリーのデータも削除できる。

 スマートフォンやノート・パソコンのリモート・ワイプは,端末のOS上で動作するエージェント・ソフトがサーバーからの指示を受信,あるいはエージェント・ソフトが定期的にサーバーに接続して指示を反映するものが多い。独自BIOS(basic input/output system)を搭載したノート・パソコンを用いて,OS起動前に指示を反映できるサービスなどもある。

 リモート・ワイプの課題は,携帯電話/PHSが圏外で通信できなかったり,端末が電源オフで指示を反映できなかったりした場合の対策。各社はこうした状況を考慮するしくみや機能を用意し始めている。例えばKDDIの携帯電話の一部機種は,指定時刻になると電源を強制的にオンにできる「オートパワーオン」機能を備える。