企業の財務情報を公開するための標準データ・フォーマット。財務データの再利用性を高めた。2009年3月期決算の財務諸表から、同形式による提出が義務付けられた。

 インターネットを利用しての企業の情報発信は、すっかり当たり前のものになりました。財務情報も例外ではなく、大半の企業が四半期ごとの決算資料をウェブサイトに公開しています。投資家などはネットを介して決算資料などのデータを簡単に入手できるようになりました。

 ただし、入手した財務情報を加工し、企業の財務状態などを分析するには余計な手間がかかっていました。ウェブサイトに公開されているデータは、そのままでは表計算ソフトなどに取り込めず、手作業でデータを入力し直す必要があったのです。

 このような手間を解消するために登場した標準データ・フォーマットがXBRLです。米国の公認会計士チャールズ・ホフマン氏が提唱し、米国公認会計士協会が2000年に策定しました。

 国内では、2003年に東京証券取引所が企業情報の適時開示情報システムに採用。続いて2004年に国税庁が「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」にXBRLを採用して認知度が高まりました。

効果◆財務情報のデータ互換性を確保

 XBRLは、企業間取引などで広く使われているXML(拡張可能なマークアップ言語)がベースになっています。特徴は、システム環境に依存しないデータ構造や計算ロジックを定義できることです。「資産」や「負債」といった勘定科目の項目名や並び順、勘定科目間の計算式などです。コンピュータやソフトウエアの種類が異なっても、相互にデータの交換・加工ができます。企業が作成した財務データを分析ツールにそのまま取り込め、投資家や融資を審査する金融機関が財務情報を分析しやすくなるわけです。

 企業にもメリットがあります。例えば、XBRLにデータ整合性チェック機能を埋め込むことで、誤りの検出が簡単になって、財務情報の正確さの確保が容易になります。金融機関に融資を申し込む際などの事務手続きの簡略化も期待できます。国税庁のe-Tax向けに提出したXBRL形式の申告書や納税証明書の電子データを、金融機関にそのまま送信できるからです。納税を終えた後に改めて申告書を印刷し、金融機関に提出する無駄が省けます。

動向◆財務諸表のXBRL対応が義務に

 XBRLの普及には政府も積極的です。金融庁は2008年3月、有価証券報告書や大量保有報告書などの電子開示システム「EDINET」をXBRLに対応させました。さらに2009年3月期決算企業の第1四半期の財務諸表データから、XBRL形式で提出することを義務付けました。東京証券取引所も2008年7月、企業が提出する決算短信をXBRL形式にするよう義務付けました。