グローバル企業が、開発・購買・生産・販売などの業務機能をそれぞれに最適な地域で実行すること。米IBMが自社の改革に当たって提唱した概念だ。

 GIE(グローバルに統合された企業)は、インターナショナル企業(本社機能は自国にあり、海外では生産や販売だけを行う)、多国籍企業(海外各国で地域ごとに開発・購買・生産・販売まで行う)に続く、経営のグローバル化の第3段階に当たる形態です。開発・購買・生産・販売などの業務機能を、それぞれ最適な国・地域で実行し、各国が相互に連携している企業の形態を指します。

 2002年にトップに就任した米IBMのサミュエル・J・パルミサーノ氏が、自社の経営改革を進めるに当たって提唱しました。

効果◆世界規模で最適化

 IBMは購買業務を最適化するために、購買部門の機能や従業員を米国から中国・深センに移しました。コールセンター業務は人件費の安い中国・大連などに集約し、ソフトウエア開発業務は優秀な理系人材を採用しやすいインドに集約しつつあります。インド拠点の2007年末の従業員数は約7万4000人で、既にIBM全体の2割程度を占めます。しかし、約9割がインド市場以外向けのソフト開発業務を担当しているそうです。

 これによって、コスト効率を上げたり、特定地域の優秀な人材を全社的に活用したりできます。こうした改革などの効果で、IBMの売上高総利益率は、2004年12月期の36.9%から一貫して上昇し、2007年には42.2%に達しました。

課題◆機能特化迫られる日本

 グローバルに統合することは、地域に適した役割が見直されることと表裏一体です。

 IBMがGIE改革を推進するなかで、日本法人(日本IBM)の地位が低下したという見方があります。IBMの日本市場向けの売上高は全体の1割以上を占める大きな規模で、これまで日本法人は独自の発展を遂げてきましたが、今ではグローバル体制に組み込まれつつあります。日本IBMはこの数年でコスト高の日本国内の生産拠点を次々と縮小しました。日本国内では優秀な理系人材を採用しにくい実情もあり、設計・開発などの業務の海外シフトも今後は進む可能性があります。

 外資系企業に限らず、日本企業でもGIEを志向する動きがあります。例えば、オムロンは以前から工場の中国シフトを積極的に進めていましたが、最近になって、購買・開発などの拠点も中国に移しつつあります。

 本社機能の海外移転がささやかれる日本企業も少なくありません。日本では一部業務機能に特化するグローバル企業が増えそうです。米IBMの場合は、日本では営業機能のほか、「東京基礎研究所」の研究機能などを残しています。