図1 カンターラ・イニシアティブの役割。各ID管理技術の相互運用と導入拡大を推進する。
図1 カンターラ・イニシアティブの役割。各ID管理技術の相互運用と導入拡大を推進する。
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 「Kantara Initiative」(以下カンターラ・イニシアティブ)とは,三つのID管理技術の相互運用を目指す業界団体のことである。2009年6月17日に米国で設置された。三つのID管理技術とは,(1)「OpenID」,(2)「SAML」(security assertion markup language),(3)「Information Card」――を指す。日本でも,カンターラ・イニシアティブの設置を受けて,国内事情を考慮するための組織である「ジャパン・ワークグループ」と「ジャパン・ディスカッショングループ」が発足した(図1)。

 各ID管理技術の相互運用については,既に2007年に発足した「Concordia Project」(以下コンコーディア・プロジェクト)などが取り組んできた。コンコーディア・プロジェクトは,相互運用の利用形態(Use Case)に応じてどのように運用面でカバーしていくかなどを研究し,実証してきた。しかしOpenIDとSAML,Information Cardの三者の技術仕様を横断的にチェックし,それぞれを見直すような提案には至っていなかった。

 カンターラ・イニシアティブは,Use Caseだけにとどまっていたコンコーディア・プロジェクトの活動を一歩推し進め,スムーズな相互運用のために各技術の仕様変更も提案していく。これを実現するにはID管理技術にかかわる団体が協調する必要がある。

 現在,カンターラ・イニシアティブには多くの団体・企業が発起人や理事として加わっている。発起人には,前述のコンコーディア・プロジェクトをはじめ,SAMLの仕様策定にかかわる「Liberty Alliance」や,Information Cardの標準化を進める「Information Card Foundation」などの7団体が名を連ねる。米インテルや米オラクルなどのIT企業も理事会員として参加。日本からはNTTや野村総合研究所が理事としてかかわっている。また,電子政府サービスを提供するデンマークやニュージーランドの両政府も参加している。

 活動内容としては,相互運用を実現するために技術的な課題や問題を洗い出し,各技術の仕様の草案を作成したりすることなどが挙げられる。また,ID情報や認証手続きが正しく実施されているかといった相互運用の監視や,各技術の採用を促進するためのセミナーの開催などを実施していく計画である。