企業における情報システム活用に必要なスキル項目を経済産業省が定義した文書。ユーザー企業でシステム企画を担う人材の能力を評価するための基準を示す。

 「情報システムユーザースキル標準(UISS)」は、企業における情報システム活用にまつわる課題を解決するためのスキル項目を定めたものです。

 経済産業省の外郭団体である情報処理推進機構(IPA)がIT(情報技術)人材のスキルを定めた「ITスキル標準(ITSS)」の「ユーザー企業」版として策定しました。2006年6月にUISSの初版を公表し、2008年7月時点では「Ver.1.2」(2008年3月公表)が最新版で、今も改定作業が続いています。文書はIPAのウェブサイトで参照できます。

 日本におけるIT人材の比率は開発・運用を担当する技術者に偏っています。政府の狙いは、戦略・企画の体制が弱い現状を是正することです。

効果◆企画力を評価

 UISSは、ユーザー企業のシステム企画担当者がこなすべきタスクを、約400の小項目で定義しています。各タスクについて、「レベル4:指導できる」から「レベル1:指導の下でできる」まで4段階で評価する仕組みです。個人や情報システム部門の現時点でのスキルレベルを把握したり、今後の人材育成に生かしたりする時の物差しとして使えそうです。

 項目は経営戦略に関するものから日々の業務まで多岐にわたりますが、IT関連の技術スキルよりも、システム企画のスキルを問う内容が多くなっています。

 例えば、「経営方針を正確にとらえることができる」「情報戦略の実現度合いを確認するための成果指標を設定することができる」「取締役会と連携して、企業のITリスク傾向を定義できる」「個人情報保護の観点から個人情報取り扱い方針を定めることができる」といったものです。国際的に幅広く活用されているITガバナンスの基準「COBIT」の内容も織り込んでいます。

事例◆リクルートなど採用

 UISSはITSSなどほかのスキル標準に比べてまだ認知度が低く、普及途上です。リクルートや米ファイザー日本法人などITSS導入で先行した一部のユーザー企業は、UISSを活用した人材育成に取り組み始めています。

 ユーザー企業で構成する日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)はCIO(最高情報責任者)向けにIT企画部門のあるべき姿を分かりやすく示したUISSの「CIO概説書」を作成したり、セミナーを開催したりして、啓もうに努めています。

 IPAは、2007年9月にUISSで定義したスキルレベル別人材分布状況の統計を発表しています。さらに、国家試験である「情報処理技術者試験」の出題内容との関連をより強めて、試験受験者への普及を促進していく計画です。