図1 IPアドレス移転に関する主な内容 2009年2月に実施されたAPNIC27会合で決まった。
図1 IPアドレス移転に関する主な内容 2009年2月に実施されたAPNIC27会合で決まった。
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 IPv4アドレスは,早ければ2年後の2011年に国際的な在庫がなくなると言われている。このIPv4アドレス枯渇対策の一つとして見られているのが,当事者同士でIPv4アドレスのやりとりを可能にする「IPアドレスの移転」である。ただ,IPアドレスの移転は,現行のルールでは認められていない。

 こうした状況を踏まえ,2009年2月にフィリピンで開催されたアジア太平洋地域のIP アドレス割り振りルールを決めるAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)27の会合において,IPアドレスの移転を可能にするポリシーが承認された。

 この会合では,移転できるアドレスの最小サイズや,アドレスを移転できる組織,移転したアドレス情報の公開,このポリシーの施行時期などが決まった(図1)。

 ただし今回の会合では,「アドレスを移転する際にAPNICが審議をするかどうか」と「アドレス移転の交渉方法」は議論の対象外となった。このことは,IPアドレスの売買を事実上容認することを意味する。売買にあたっての金額や,売買がどのように実施されたのかなどの審議もない。

 そもそもIPアドレス移転の提案が出された背景には,「IPv4アドレスが枯渇した際には,IPアドレスが闇で取引されるのではないか」という懸念があった。IPv4アドレスを闇で取引するようなマーケットが出現すると,誰がどのIPアドレスを持っているのかがわからなくなる。インターネットで問題が発生したとき,IPアドレスからその責任者を突き止められなくなるわけだ。

 そこでAPNIC では,IPv4アドレス枯渇後も「IPアドレス」と「IPアドレスの保持者」が記載されているアドレス台帳を正しく管理し続けることに注力する。今回承認されたポリシーは,このために必要な最低限のルールを提案したもので,それ以外は市場や各国の組織に委ねるというスタンスである。