通常のオフィスビルの場合,消火設備として消火栓やスプリンクラーなど,水を使った消火設備が設置されますが,データセンターの場合,散水によるIT機器の損傷を避けるため,ガスを使った消火設備を導入します。

 ガス系の消火設備では,主にハロゲン化物と不活性ガスの2種類の「新ガス」を使います。

 新ガスは,他の物質と化学反応を起こさない種類のガスで,窒素ガスがその代表です。新ガスは,大気に存在する窒素を主成分とし,人体にも無害です。

 ハロゲン(ハロン1301)は,古くから電気室や電算室,美術館,駐車場などの消火に利用され,豊富な実績があります。しかし,ハロンを含むフロン類がオゾン層を破壊する可能性があることから,今ではハロン1301が使われることは,ほとんどなくなりました。

 ハロゲンに代わって,新しいデータセンターで導入が増えているのが,地球環境に悪影響を及ぼさない新ガスによる消火設備です。

 ガス系消火の設備としては,ガスを消火対象エリアに送る配管,ガスを吹き出すための噴射ヘッド(写真),ガスを蓄えておくガス貯蔵ボンベ,放出区画内の室内圧を逃がす避圧ダンバーなどが必要となります。

写真●ガスを吹き出すための噴射ヘッド
写真●ガスを吹き出すための噴射ヘッド
大成建設 IT施設計画室
室長 諏訪 浩一

IT施設計画室は,データセンターの企画・設計を手掛けるデータセンターの専任部署。データセンターに適した土地かどうかの調査や,データセンターの設計・施工に豊富な実績を持つ。同社のIT部門に所属していた担当者が多く,現場のシステム運用を理解していることも強み。データセンター・プロジェクトチームは,IT施設計画室を核として,各部門の専門家が集まった組織。諏訪氏はプロジェクトチームの一員。