図1 EEEで想定されている省電力化の手法 イーサネット上を流れるデータの実際の通信速度を測定し,通信速度が低い際に消費電力が少ない手段を選ぶ
図1 EEEで想定されている省電力化の手法 イーサネット上を流れるデータの実際の通信速度を測定し,通信速度が低い際に消費電力が少ない手段を選ぶ
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 Energy Efficient Ethernet(EEE)とは,省電力型のイーサネットのこと。IEEE802.3委員会が標準化を進めている。2008年11月にIEEE P802.3azタスクフォースでDraft1.0が採択され,技術の大枠が決まった。順調に進めば2010年後半をめどに標準規格が完成する予定である。

 EEEの大きな目的は,電力コストの増加を抑えること。100Mビット/秒から1Gビット/秒,さらに10Gビット/秒へとイーサネットの伝送速度が高まるにつれ,ネットワーク・カードの消費電力が加速度的に増えているためだ。

 EEEでは省電力化のための手法が二つ検討されている(図1)。一つは「LPI」(low power idle)という手法である。イーサネットでは常に帯域を使い切っているわけではない。そこで通信に使わない時間に着目したのがLPIだ。使わないときは,MAC層のチップへの電源供給を止めることで消費電力を減らす。

 もう一つの省エネ手法として考えられているのが「RPS」(rapid PHY selection)である。物理層(PHY)のチップを制御して消費電力を削減する。イーサネット上の実際のトラフィックが少なくなったときに,例えば伝送速度を1Gビット/秒から100Mビット/秒,10Mビット/秒へと順次落としていく。一般に,物理層の伝送速度が低いほど,チップの消費電力は少なくなる。そこで実際のトラフィックに合わせて物理層のチップの伝送速度を低くすることで省エネを実現する。

 なお,EEE Draft1.0では,LPIだけが採択されている。LPI はチップの電源をオン/オフするだけのシンプルな構造なので,より実現性が高いからである。一方のRPSについては,チップを制御するための電力消費が省エネ効果を上回る可能性もあることから,採択の可否は今後の議論に委ねられている。