企業内のデータファイルを統合的に管理する仕組みやツールのこと。業務プロセスに関する文書管理を必要とする内部統制を支援する手段として注目が高まっている。

 業務マニュアルを閲覧しようとグループウエアの掲示板などを探し回った挙げ句、部内のファイル・サーバーで見付かった、といった経験はありませんか。企業内の各地に文書データが散在している状態を放置すると、必要なデータを探すのに時間を取られ、社員の生産性が低下してしまいます。

 経営管理の立場から見ても問題です。機密性の高い情報を含む文書がどこかで流出しても気づきにくいなど、経営上のリスクを高めるからです。

 こうした状態を克服する手段として、「ECM(エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント)」という言葉が最近になって注目を集めています。企業内のコンテンツ(情報の中身)を統合的に管理する仕組みやそのためのIT(情報技術)ツールを指します。ECMツールは、業務の流れを可視化するワークフロー機能や、誰が文書を閲覧したかを自動的に記録する機能などを備えたものが主流です。

効果◆内部統制対策で脚光

 ECMという言葉自体は2000年ごろに誕生しました。それが最近になって脚光を浴びた背景としては、金融商品取引法に定められた内部統制制度(いわゆる日本版SOX法)の対策に有効との期待がかかっていることが挙げられます。

 ECMツールを利用して、業務フローの作成を効率化したり、誰が文章を承認したかなどのプロセスを自動的に記録することで、「正確かつ効率的な監査が可能になる」(日本IBM)というわけです。

 ECMツールは業務効率化にも生かせます。例えば、ワークフローを可視化して業務プロセスを見直すことが考えられます。また、アクセス権を適切に定めつつ全社の文書を横断的に管理する機能を活用すれば、ナレッジ共有の促進が期待できます。

 ECMと類似する概念の用語に、「CMS」(コンテンツ・マネジメント・システム)もあります。CMSは一般に、ウェブサイト用のコンテンツを管理するシステムを指します。一方、ECMは一般社員が作成したワープロ文書や帳票など、企業内の様々なデータを管理できます。ただし最近は、ECMツールと同様の機能を備えたCMSツールも登場しています。

事例◆研究成果を安全に共有

 医薬品大手、第一三共グループのアスビオファーマ(東京・港)は、研究報告や臨床試験資料などの文書を安全に管理する目的で2006年にECMツールを導入しました。文書の閲覧・編集権限を設定し、さらに閲覧や編集の履歴を記録して悪意を持った改ざんを防止。そのうえで適切な社員同士で文書を共用することにより、ナレッジ共有を促進しています。