「最高戦略責任者」の略語。CEO(最高経営責任者)を補佐して、戦略立案プロセスを体系化し、その実行の指揮を執ってスピーディに戦略を実現する。

 CIO(最高情報責任者)、CHO(最高人事責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)─。企業の様々な業務を統括する責任者を「CxO」として定義する企業が国内でも増え始めました。では「CSO」とは? その答えは2つ。1つは内部統制などで重要性が高まる「最高セキュリティー責任者(Chief Security Officer)」。もう1つが「最高戦略責任者」としてのCSOです。

 企業の持続的な成長を左右する経営戦略に最終責任を負うのはCEO(最高経営責任者)ですが、巨大で複雑化した組織の隅々にまで戦略を浸透させ、機動的に実現させていくためには補佐役も必要です。戦略責任者であるCSOの役割とは、CEOと連携しながら戦略の立案とその実行を指揮することだといえるでしょう。部門やグループ企業それぞれの戦略に整合性をもたせ、全社最適化に向けて調整する機能も担っています。

効果◆戦略を阻む課題解決も担う

 米アクセンチュアCSOのティモシー・ブリーン氏らは米国の有力経営誌である『ハーバード・ビジネス・レビュー』に寄稿した論文「CSO:最高戦略責任者の役割」の中で、グローバル企業の200人以上のCSOの特性を調査・分析しています。この中で指摘しているのは、「CSOは単なる戦略立案者ではなく、実行するビジネスリーダーである」ということです。

 “ミニCEO”として組織が直面する課題に幅広い視点で対処し、具体的な戦略を分かりやすく各部門に説明して各社員が自分の仕事と会社の目標の関係を把握できるよう支援したり、戦略上の緊急課題の解決を担い、改革を加速させたりといった機能を果たすことが期待されています。

 CSO職を設置することで短期的には戦略に関する意思決定が早まるメリットがあります。中・長期的にはラインのマネジメントが戦略開発に役立つ能力を身につけたり、次期経営トップの育成を支援したりといった効果も生まれています。

事例◆戦略リスクを管理

 帝人は持ち株会社制に移行した2003年からCSO職を設置しています。CSOはグループの中・長期計画や、成長・競争戦略の立案・推進を担うほか、リスクマネジメントの強化にも貢献し、取締役会やCEOによる意思決定を、経営戦略リスクの観点でサポートします。同社は業務運営リスクを統合的に管理するために、取締役会の下に「TRM(トータルEリスクEマネジメント)コミティー」を設置していますが、CSOもそのメンバーの1人。グループ全体を取り巻く様々なリスクや不確実性を把握して経営に生かす仕組みの整備を進めています。