図1 卸売りする側の立場が強いと価格は高くなりがち(イラスト:なかがわ みさこ)
図1 卸売りする側の立場が強いと価格は高くなりがち(イラスト:なかがわ みさこ)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 価格決定のルールを決めてもうけ過ぎをなくす(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 価格決定のルールを決めてもうけ過ぎをなくす(イラスト:なかがわ みさこ)
[画像のクリックで拡大表示]

 接続料とは,電話事業者をまたいで通話を転送するときに,ユーザーに課金する側の事業者がほかの事業者に支払う事業者間の通信料金のことである。総務省の情報通信審議会では,携帯電話事業者に支払う接続料について,計算方法のルールを決めるかどうかの議論を始めている。ルールが決まって接続料が引き下げられれば,固定電話から携帯電話への通話や,携帯電話同士の通話の料金が今より安くなる可能性がある。

 ユーザーが普段意識することはないが,接続料は通話料金に見えない形で含まれている。

 例えば固定電話から携帯電話への料金は,固定電話事業者が課金する場合で3分当たり48~56円程度である。携帯電話事業者の接続料は,3分当たり30~50円程度。固定電話事業者が利用者に課金する料金の大部分は,携帯電話事業者に接続料として支払われているのである。値下げする余地はほとんどない。

 一方,固定電話事業者の接続料は,携帯電話事業者の接続料より大幅に安く,3分当たり4~6円程度である。携帯電話から固定電話に電話をかけても,携帯電話事業者から固定電話事業者に支払う接続料はわずかだ。接続料は,固定電話事業者に負担が大きく,固定電話から携帯電話への通話料金を高止まりさせている原因になっている。ところが携帯電話の接続料は,算出の根拠がはっきりしていない。現状の携帯電話の接続料は,高すぎると考える人たちもいる。

 では,携帯電話の接続料はどうやって決められているのだろうか。市場で25%以上のシェアを占めるNTTドコモとKDDI,沖縄セルラー電話は,適正な原価に適正な利潤を加えた接続料を計算して,総務省に届け出ることになっている。ただし,算出方法はそれぞれの携帯電話事業者の判断に任されている。

 そもそも接続料の算出方法に,全事業者で明確な合意があるわけではない。未使用分や共通の設備の費用,宣伝費,営業費,事務費などの経費の配分方法は,事業者の立場によって見解が異なる。携帯電話の接続料の場合,事業者はコストを極力自社に有利な方法で計算して,高めの接続料を決めている可能性がある。

 ただし,接続させてもらう立場の事業者は,接続料が高いと感じても,引き下げてもらうことはなかなかできない。原価の内訳を知るのは接続料を請求する側の携帯電話事業者だけなので,相手の手の内はわからない。自社のユーザーに不便を強いることを考えると,高すぎるから接続をやめるというわけにもいかない。弱い立場で代替手段がないため,不当に高いと思っても,言い値で仕入れるしかないスタジアムの販売員のような立場に例えられる(図1)。

 そこで総務省は,携帯電話の接続料について,算出のルールを決めることで透明性を増すことを検討している。スタジアムに例えていえば,球団関係者が価格算出ルールを決めて守らせることでもうけ過ぎを防ぐようなものだ(図2)。接続料が下がれば,最終的にユーザーが支払う料金も下がる可能性がある。