図1 イベント会場のような限られたエリアに映像などを配信(イラスト:なかがわ みさこ)
図1 イベント会場のような限られたエリアに映像などを配信(イラスト:なかがわ みさこ)
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図2 イベントや地域を魅力的にするのがねらい(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 イベントや地域を魅力的にするのがねらい(イラスト:なかがわ みさこ)
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 エリア・ワンセグとは,携帯端末向けの地上デジタル放送のしくみである「ワンセグ」技術を使って,テレビ局の放送とは別に,狭いエリアに限定して独自の映像やデータを配信するサービスを指す(図1)。「エリア限定ワンセグ」や「ワンセグメント・ローカルサービス」といった呼び方もある。

 エリア・ワンセグで使われる電波は,UHF帯の中で,そのエリアで既存の地上デジタル放送に影響を及ぼさないチャンネルのものになる。受信側の端末には,専用端末を使うケースもあるが,多くの場合はワンセグ機能を備えた携帯電話機を使う。

 エリア・ワンセグの実験サービスは,2008年ころから日本全国各地で多く実施されている。展示会や地域密着型イベントでの事例のほか,自動車レース「フォーミュラ・ニッポン」が開催された各サーキットやサッカーJリーグの試合が行われたスタジアムで,試合の状況や各種データを配信するのに使われた事例もある。さまざまな企業がエリア・ワンセグに魅力を感じている表れといえる。

 では,エリア・ワンセグの魅力とはどんなものだろうか。自動車レースが行われるサーキットでの実験サービスを例に見ていこう(図2)。

 広いサーキットでは,観客席から見渡せないところが多くある。追い抜くシーンやタイヤ交換の状況など,自分の客席から見えないところでレースが動くことも多い。そうした場所でのレース状況をワンセグで配信すれば,自分の観客席にいながら,より臨場感のあるレースを楽しめるようになるだろう。映像に合わせて順位やラップタイムなどのデータを配信すれば,さらに魅力が増すことになる。

 また,レースを見に来る観客は,コアなファンであることが想定される。そうしたファン向けに,例えばレースの名場面を集めたDVDのCMを流せば,通常のメディアで広告するより高い効果が期待できる。

 イベント以外でも,渋谷の街中で映画の予告編などのエンタテインメント情報を発信するといった,地域密着型のプロモーション手段での利用も考えられている。

 さまざまな可能性を感じさせるエリア・ワンセグだが,まだ法律で制度化されたサービスにはなっていない。現状は,総務省から実験試験局の免許を取得して実施する「実験サービス」の位置付けである。今後の正式サービス化に向けて,技術基準を決めるなどの議論が進められる見込みである。