音楽や映像、文書などのデジタルコンテンツを暗号化し、対価を支払った人や特定の機器しか再生できないようにする著作権保護機能のこと。

 最近、街なかで音楽を聴いている人の多くは、米アップルの携帯型音楽プレーヤー「iPod」に代表されるデジタル機器を持ち歩いています。こうしたデジタル機器はデジタル化された音楽データのファイルを機器内に保存しています。アップルが運営する音楽データの販売サイト「iTunes Store」などでは、気軽に音楽データを購入できます。

 この時に問題になるのがデジタルコンテンツの著作権保護です。不正コピーや内容の改ざんといった違法行為が横行しないように、コンテンツに著作権を保護する暗号化機能を付加したり、コンテンツの再生回数や再生できる機器を制限したりする措置が取られることがあります。これらの技術を総称して「DRM(デジタル著作権管理)」と呼びます。

効果◆著作物の権利保護

 インターネットや携帯電話、そしてデジタル機器が一般化したことで、デジタルコンテンツの流通は今後拡大の一途をたどると考えられます。これに対応して、DRMの重要性も増していくでしょう。コンテンツを製作して販売する人の著作権がきちんと守られ、かつ、そのコンテンツを有料で購入した人だけが安心して利用できる仕組みが不可欠になるからです。不正コピーを放置したままでは、コンテンツ流通の健全性は保たれません。

 しかし現実には、デジタルコンテンツの違法コピーが社会問題になっているのも事実です。特に、「YouTube(ユーチューブ)」に象徴される動画配信の世界では、著作権の所有者から許可されていないコンテンツが広く出回っています。人気の動画が話題作りや集客に大きな役割を果たしているのは確かですが、DRMの導入は課題となっています。

 DRMの適用分野はビジネス情報の文字データにも及びます。例えば、情報漏えいのリスクを軽減するためにDRMが使われることがあります。顧客名簿などの機密情報が書き込まれた文書や図表などのファイルにDRMを設定することで、他社の人が内容を読み書きできないようにするためです。

課題◆利便性確保が先

 実は今、DRMのあり方が揺らいでいます。2007年からは販売当初からDRMを設定しない「DRMフリー」のコンテンツが出回り始めました。アップルや米アマゾン・ドット・コムなどは音楽提供会社と協議して消費者の利便性を優先し、一部の音楽データでDRMの設定をやめたのです。これは、コンテンツを手に入れてもDRMのせいで再生できる機器が限られてしまうなどの制約に、消費者側から反発の声が出たため。著作権の保護は大事なことですが、消費者の利便性を犠牲にしないで済む、より進んだ管理技術の開発が課題といえるでしょう。