「Val IT」は、企業価値を生むためのIT(情報技術)投資実践の枠組みを示した指針で、米ITガバナンス協会(ITGI)が2006年に策定しました。日本語訳は日本ITガバナンス協会(東京・港)が2007年4月からウェブサイトで公開しています。IT部門よりも経営幹部・企画担当者向けに書かれており、IT投資を、業務効率化を超えた企業価値向上につなげるための方策を示しています。

 Val ITは「重点管理プラクティス」として40の実施すべき活動を網羅しています。単なるIT投資管理という視点ではなく、「情報化投資は事業方針と整合していると理解されていることを確認する」「IT投資の説明責任を負う人には十分な権限と自由裁量を与える」「利害関係者との連絡体制を確立する」といった組織作りにかかわる項目を含んでいます。

 従来からあるITガバナンス(統治)の指針としては、COBIT(コビット)が有名です。Val ITは、「COBITを基にしている」と説明されています。COBITが、調達や開発、運用といった「IT投資の実行」自体に焦点を当てるのに対し、Val ITはその前後のプロセス、すなわちIT投資実行前の準備や、実行後の効果を確実に生み出す部分に重点を置いているのが特徴です。