2008年の元日、自宅に配達された年賀状の中に、緑色の文字で「CARBON OFFSET(カーボンオフセット)」という表示を見かけた人も多かったことでしょう。これは日本郵政グループが発売した1枚55円の「カーボンオフセット年賀(寄付金付きの年賀葉書)」です。この葉書を購入することで、一般消費者も二酸化炭素に代表される温室効果ガスの削減に5円を寄付できました。

 ただし、厳密には、この年賀状はカーボンオフセット商品ではありません。本来なら、年賀状を作成したり配達したりする過程で発生する二酸化炭素(カーボン)の排出量を計算し、その分を植林などの別な手段で相殺(オフセット)します。これが本当のカーボンオフセットですが、まだそうした商品はほとんど存在しません。今回の年賀状はカーボンオフセットを世間に知らしめる意味で大きな役割を果たしましたが、一方で消費者に誤解を与えかねない懸念も残しました。

 最近課題として指摘されつつあるのは、カーボンオフセットという環境にやさしい響きの言葉をマーケティングに生かし、商品の売り上げを伸ばそうとする動きが見え隠れしてきたことです。二酸化炭素は無駄な消費を抑えることで排出量を低減できますが、カーボンオフセットをうたいながら、消費をあおる企業が出てくれば、本末転倒といえます。