図1 今までとは異なる概念でフロー制御するプログラマブル・フロースイッチ
図1 今までとは異なる概念でフロー制御するプログラマブル・フロースイッチ
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図2 プログラマブル・フロースイッチはスイッチ部と制御部に分かれている
図2 プログラマブル・フロースイッチはスイッチ部と制御部に分かれている
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 「プログラマブル・フロースイッチ」とは,実際にフローを処理するスイッチ部と,そのスイッチ部にどのようなフロー処理を行わせるかを指示する制御部(制御サーバー)に分離したスイッチのこと。ネットワークと仮想マシンを連動して柔軟なクラウド・コンピューティングを実現するなど,革新的なインフラを構築できるスイッチだ。2008年10月30日には,NECが試作したプログラマブル・フロースイッチが,日米間のライブ・デモンストレーションでお披露目されて注目された。

 フロースイッチとは,通信を「フロー」として識別し,フロー単位でさまざまな制御を加えるもので,通常はスイッチ本体にフロー制御機能を一体化している。一方,NECが発表したプログラマブル・フロースイッチは,スイッチ部と分離した制御部のサーバーでフロー制御の方法をプログラムし,その制御方法をスイッチ部に送ってフロー制御を実行するしくみになっている。

 スイッチ部と制御部の間には,OpenFlowコンソーシアムが規定するOpenFlowインタフェースを利用する。OpenFlowはオープンな規格であり,現在,NEC,米シスコ,米ジュニパーネットワークス,米HPなどが規格に合わせたフロースイッチの試作機を開発している段階だ。

 OpenFlowインタフェースでは,従来のフロー制御とは異なる新たな方法を採用している。一つのフローに対して,「ルール」,「アクション」,「スタティスティックス」(統計)という概念を適用するのだ。これは,一つのフローを,「何を」,「どうする」,「どうなっている」という情報に定義しなおしたものになっている(図1)。

 プログラマブル・フロースイッチの具体的な動作を図に示した(図2)。クライアントから最初に送出されたフレームのみ制御部に行き,既知のフロー定義かどうかを確認する。その後,同一通信の二つ目以降のフレームは,スイッチ部で直接フロー制御される。

 制御部でフローの定義情報をプログラムできるということは,新しいプロトコルが規格化されてネットワークで使われるようになったとしても柔軟に対応できることを示している。NECは「新世代ネットワーク」などの検証や実験でも,このプログラマブル・フロースイッチが使えるとしている。新世代ネットワークとは,情報通信研究機構が中心になって研究・開発している,インターネットの課題を改善した新しいネットワークのこと。IPを使わずに,新しく開発したプロトコルを使ったプラットフォームとなる予定で,2015年以降の完成を目標にしている。

■変更履歴
記事掲載当初,情報通信研究機構が「新世代ネットワーク」でプログラマブル・フロースイッチを使う予定としていましたが,実際は未定でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/12/19 14:50]