エネルギー使用製品に対して環境配慮設計(エコデザイン)を義務づけるEU指令。2005年7月6日に欧州議会で「枠組み指令」が採択され,8月11日にEU各国の国内法規として発効した。その後,規制対象製品の定義や予備調査,意見調整などを経て,2009年初頭から製品分野ごとの詳細な規制内容である「実施措置」が順次決議され,法律の運用が本格的に始まる。

 EuP指令は,原材料の調達から製造,流通,使用,廃棄に至るまで,製品のライフサイクル全体における環境負荷低減を目指し,3つの要求事項を製造者に求めている。(1)マネジメント要求,(2)一般的エコデザイン要求(),(3)特定エコデザイン要求──である。

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図●EuPの一般的エコデザイン要求の内容
製品のライフサイクル全体にわたって環境負荷を定量的に評価した「エコロジカル・プロファイル」の作成を求めている。出典:日経BP環境経営フォーラム 環境マネジメント研究会資料。

 一般的要求では,LCAすなわち環境負荷を定量的に評価した「エコロジカル・プロファイル」の作成を義務づけ,必要に応じて消費者や欧州委員会に開示することを求めている。一方,特定要求の方は,使用時の電力消費量など,機能/性能の基準値を製品分野ごとに設定し,環境負荷を定量的に規制する。

 EuPはCEマークの新たな適合条件になることが正式に決まっている。CEマークとは所定のEU指令への適合証であり,取得すればEU加盟国の個別規制に左右されることなく,EU域内で自由に取り引きできる。EUで製品を販売・流通する日本企業にとって,CEマークの取得が必須になるため,EuPについても早急に対応する必要がある。

 かつて日本の電子電機業界は,特定有害物質の使用禁止に関するEU指令であるRoHSの国際標準化作業で後手に回り,結果としてその対応に振り回された。このためエコデザイン規制のEuPでは同じ轍を踏まぬように日本は先手を打った。IEC(国際電気標準会議)においてエコデザインの標準化作業を担当するワーキング・グループの国際主査を日本が確保し,日本の意向をかなり反映させることができた。

 2009年の運用開始当初の規制対象となる製品は14品目で,IT関連機器では,パソコンとモニター,画像装置(ファックス,写真複写,スキャナなど),テレビなどがある。このほか,製品の種類によらず横断的に適用されるものとして,電池と外部電源,スタンバイモードとオフモードという品目がある。

 パソコンなどの省エネ基準としては,すでに米国の消費電力規格「ENERGY STAR」が普及しており,どのように整合させていくかが注目されている。さらに今後の規制対象として,空調・ヒートポンプやネットワーク機器など約40品目が候補に挙がっており,その動向にも注視する必要がある。