図1 二つの種類があるWiMAXのサービス(イラスト:なかがわ みさこ)
図1 二つの種類があるWiMAXのサービス(イラスト:なかがわ みさこ)
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図2 ブロードバンドが来ていない地域に無線でサービスを提供(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 ブロードバンドが来ていない地域に無線でサービスを提供(イラスト:なかがわ みさこ)
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 2008年9~10月,総務省が3社のケーブルテレビ事業者に,「地域WiMAX」のサービスのための免許を与えた。この「地域WiMAX」とは,全国向けのWiMAXサービスと異なり,地域に限って提供するWiMAXサービスのことである。

 WiMAXは無線ブロードバンドを実現する技術の一つである。国内で無線ブロードバンド・サービスを提供できる周波数帯域としては2007年に免許方針が固まった2.5GHz帯がある。2.5GHz帯は大きく2種類に分けられる。それは,全国を対象とした帯域(全国バンド)と,地域を対象とした帯域(地域バンド)だ(図1)。

 全国を対象とした30MHz幅の帯域は,二つ用意されている。そのうち一つはKDDIやインテルが出資するUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXを使ったサービスに,もう一つはウィルコムの次世代PHSを使ったサービスに,割り当てられている。

 一方,地域を対象とした10MHz幅の帯域は,WiMAX方式でサービスを提供すると定めている。そこで,この帯域を使ったサービスを「地域WiMAX」と呼ぶ。地域WiMAXは,地域に密着したブロードバンド・サービスの提供が目的であり,サービスを提供できるエリアは最大でも複数の市町村までである。県全域にわたるような広域サービスはできない決まりになっているのだ。

 全国向けのUQコミュニケーションズのWiMAXサービスと地域WiMAXサービスには,提供エリア以外にも違いがある。技術として,UQコミュニケーションズは移動体向けのモバイルWiMAXを採用する。一方の地域WiMAXでは,モバイルWiMAXに加え固定通信向けのWiMAXも使える。こちらは端末が移動しないことを前提にした技術で,モバイルWiMAXのベースとなったものである。

 特定地域に向けて無線の新しいサービスを提供できるようにする最も大きな目的は,インターネット環境の提供格差の解消である。ADSLやFTTHといった有線のブロードバンド・サービスが提供されていない「ブロードバンド・ゼロ地域」に,無線でサービスを提供しようというわけだ(図2)。

 インターネット接続は,地域情報を提供するような公共サービスのインフラとしても重要度が高まっている。例えば山間部などでブロードバンド・サービスのための有線の回線を用意できない地域に対して,WiMAXによる無線ブロードバンド・サービスを提供し,地域による情報格差が起こらないようにする。

 冒頭で紹介したように,9月には福井県敦賀市の嶺南ケーブルネットワークが,10月に入り愛知県半田市のCACおよび愛媛県新居浜市などのハートネットワークが,実際にサービスを提供するための免許を取得した。嶺南ケーブルネットワークではいち早く2008年12月にサービスを開始する計画である。