デジタルサイネージとは、屋外や交通機関、店頭、公共施設など家庭以外の場所で、ネットワークに接続したディスプレー端末を使って情報を発信するシステムのこと。ディスプレー端末ごとにコンテンツを制御できるため、例えば「朝は通勤中のサラリーマン」「渋谷エリアは若者」など、設置場所や時間帯によって変わるターゲットに向けて適切なコンテンツをタイムリーに発信できる。屋外広告の総称である「OOH(Out Of Home)」の一端を担う次世代広告媒体として、その広告価値の高さに注目が集まっている。

 都心部の電車通勤者にとって最も身近で代表的なデジタルサイネージが、車両ドア上の液晶モニターに表示される「トレインチャンネル」。ワンポイント英会話などの広告コンテンツは注目度が高く、常に数カ月先まで“満稿”状態だという。またJR中央線の新型車両では、女性専用車両と一般車両で別のコンテンツを配信する仕組みがあり、ファッション関連ニュースや習いごとの情報などが配信されている。

 さまざまな広告媒体を活用して相乗効果を高めるクロスメディア展開を考えるとき、カギになるのがケータイとの連動だ。屋外ではほぼ携帯電話を持ち歩いているため、デジタルサイネージとの相性は良い。

 日本カーライフアシスト(東京都中央区)が全国300校以上の大手自動車教習所に設置してる「JACLA VISION」は、教習生の約8割を占める20歳前後の若者がターゲット。42型プラズマディスプレーの右サイドにQRコードを表示するスペースがあり、情報番組や広告のより詳しい情報をケータイサイトで入手するように誘導している。

 この夏、フジテレビジョンが主催した「お台場冒険王ファイナル」では、アトラクション「ゲゲゲの鬼太郎妖怪ツアーズ」内のディスプレー端末にNECの顔認識技術を搭載し、来場客の容姿から性別・年代を判定。15種類の広告の中から属性に合った広告を表示し、さらにケータイのFeliCa機能を利用して属性に合った電子クーポンを配信した。ほかにも、ケータイをリモコン代わりにしてゲームをしたり、ケータイで撮影した画像を送信してディスプレーに表示させたりと、実験的な取り組みが行われている。

 2007年6月に設立された業界団体「デジタルサイネージコンソーシアム」には、広告会社、ディスプレーメーカー、コンテンツ制作会社など約80社が参画。配信部会、指標部会といった各分科会で、データの配信形式や広告効果指標の策定など業界統一のガイドライン作りに取り組んでいる。