図1 「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」が発足。アドレス枯渇による影響を調べ,国内のインターネット関連組織が適切な対策をとれるように支援する
図1 「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」が発足。アドレス枯渇による影響を調べ,国内のインターネット関連組織が適切な対策をとれるように支援する
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 インターネットで世界中のマシンを識別するため“番地”がIPアドレスである。現在のインターネットで使われている「IPv4」のアドレスは,早ければ2011年にも枯渇すると言われている。そこで,こうした状況に対応しようとする動きが本格化してきた。国内では,2008年9月5日に総務省およびインターネット関連団体による「IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース」が発足。官民一体で対策を進めていくという。

 IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース(以下,タスクフォース)に名前を連ねたのは,国内のインターネットに関連する13団体である(図1)。IPアドレス管理団体,プロバイダ,機器メーカー,インテグレータ,データ・センター事業者,企業ユーザーなど,国内のインターネットに関連するプレイヤーをほぼ網羅した格好だ。

 このタスクフォースが設立された背景には,総務省の「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」が2008年6月に策定した報告書がある。報告書では,インターネットに関係するプレイヤーごとに,IPv4アドレス枯渇対策の手順である「アクション・プラン」がまとめられている。そして,このアクション・プランを推進するにあたっては,官民一体となった体制が必要であると結論付けている。これが形になったのが,今回設立されたタスクフォースというわけだ。

 タスクフォースが実施するのは,IPv4アドレス枯渇における技術/運用/経営面の課題検討,広報啓発,進捗管理,人材育成──である。枯渇対策の具体的な方策としては,(1)割り振り済みIPv4アドレスの移転,(2)キャリアグレードNATの活用,(3)IPv6への移行──という三つの可能性を挙げている。ただし,それぞれの方策で取り組む姿勢が異なる。

 (1)のアドレス移転は,IPv4アドレスの市場取引のしくみを取り入れる方法である。IPv4アドレスの売買を認める制度を作ることで,IPアドレスの流動性を高めようというものだ。これについては「現時点では問題点が多く期待するのは危険」としており,タスクフォースでは推進しない。

 (2)のキャリアグレードNATは,プロバイダ規模でアドレス変換を実施することでIPv4アドレスを効率的に利用するというもの。こちらは,IPv4アドレスが入手できなくなった際の「緊急避難的な対処」と位置付けている。

 そして,タスクフォースが積極的に推進するのが,(3)のIPv6への移行である。IPv6移行のひな形となる手順書を各プレイヤーごとに作成し,IPv6 への移行を支援する。さらに,全国数カ所にIPv6移行スキルを習得するための実験用ネットワーク(テストベッド)を構築し,プロバイダやインテグレータに利用してもらうことで,IPv6移行スキルを持った人材を育成する。

 今回設立されたタスクフォースにおいて中心的な役割を担うのは,IPv6普及・高度化推進協議会である。以上の方策は,同協議会が中心になって実行していくことになる。