1920年代に提唱されたAIDA(アイダ)、AIDMA(アイドマ)といった消費者行動モデルは長らく消費者行動を示す法則として支持され続けてきた。しかしインターネット時代に入り、大量生産、大量消費時代に有効だったマスマーケティングに陰りが見え始め、消費者の行動も多様化が進んでいる。こうした状況に応じた新たなマーケティング戦略を立案できるようにするため、様々な企業が新消費行動モデルを提唱し始めている。

 「AISAS」(アイサス)は国内広告代理店最大手の電通が提唱し、2005年6月に商標として登録された消費者行動モデル。従来のモデルからDesire(欲求)とMemory(記憶)を省き、代わりにSearch(検索)、Share(共有)を加えて、ネット時代の消費者行動を表すものとして注目を集めた。

 このほか、丸の内ブランドフォーラム代表の片平秀貴氏が提唱する「AIDEES」や、博報堂が提唱する「ABCDEEF」、アンヴィコミュニケーションズが提唱する「AISCEAS」、GMOが提唱する「SAIDCAS」などがある。

 こうした消費者行動モデルの乱立や行動プロセスの細分化は、消費者を購買に導くことがいかに難しくなったかを示している。ただ、各社が新しく追加したり変更したりしているキーワードを見ると、「検索」「比較」「クチコミ」「ファン化」といった、いまの時代の消費者の行動プロセスが浮かび上がる。事実、検索サイトは以前にも増して重要視され、比較サイトやクチコミを生むCGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)サイトは急速に存在感を増している。

 消費者同士の情報の「共有」や「拡散」が各行動モデルに追加されていることからも、一方的なマーケティング活動が限界に来ていることが分かる。