Linuxでは,システム上のすべてのディレクトリ(ファイル)を,1つのツリー(頂点から枝分かれしていく様子)で管理しています。その頂点にあるのが「ルート・ディレクトリ」です。ルート・ディレクトリのパスは「/」(ルート)で表します。ルート・ディレクトリの下には,サブディレクトリが作られて階層化されます。

 以下,コマンドラインを操作する上で理解しておきたい,「ホーム・ディレクトリ」と「カレント・ディレクトリ」,および各ディレクトリのパスを解説します。

ホーム・ディレクトリはユーザー別に用意

 ホーム・ディレクトリは,各ユーザーごとに割り振られたディレクトリです。管理者であれば「/root」が,管理者以外の一般ユーザーであれば「/home/ユーザー名」がホーム・ディレクトリになります。ユーザーは,自らのホーム・ディレクトリの配下に自由にディレクトリやファイルを作成できます。

 注意したいのは,ディレクトリのパスを口頭で伝える場合です。ユーザーのホーム・ディレクトリである「/home/ユーザー名」と,その1つ上の階層の「/home」ディレクトリが,ともに「ホーム・ディレクトリ」のため混同しやすくなります。同様に,管理者のホーム・ディレクトリである「/root」と,その1つ上の階層の「/(ルート)」ディレクトリが混同しやすくなります。そのため,/homeディレクトリは「スラッシュ・ホーム」,/rootディレクトリは「スラッシュ・ルート」と呼んで明示的に区別する場合があります。

カレント・ディレクトリを理解する

 カレント・ディレクトリは,現在の作業場所を表します。ディストリビューションにログインした直後や,端末エミュレータを起動した直後は,ホーム・ディレクトリがカレント・ディレクトリになっています。

 カレント・ディレクトリは,ルート・ディレクトリ以外から始まる「相対パス」で表すケースが一般的で,「./」記号で表します。「pwd」コマンドを実行すれば,カレント・ディレクトリの絶対パスを調べることが可能です。

 カレント・ディレクトリを表す「./」以外に,ディレクトリの相対パスを示す代表的な記号を紹介します。1つは,ホーム・ディレクトリの相対パスである「~/」です。例えば,ユーザー名「taro」でログインしている場合,絶対パス「/home/taro/documents/test.txt」は,「~/documents/test.txt」で表せます。

 カレント・ディレクトリの1つ上の階層のディレクトリは「../」記号で表します。例えば,カレント・ディレクトリが「/home/taro」の場合,「/home/hanako」ディレクトリは「../hanako」で表せます。

 カレント・ディレクトリの2つ上の階層を表すときは「../../」と入力します。カレント・ディレクトリが「/home/taro」の場合,「/etc」ディレクトリは「../../etc」で表せます。