図1 家庭の外にあるディスプレイに広告が流れる(イラスト:なかがわ みさこ)
図1 家庭の外にあるディスプレイに広告が流れる(イラスト:なかがわ みさこ)
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図2 ネットワーク化で流れる広告は便利で価値が高いものになる(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 ネットワーク化で流れる広告は便利で価値が高いものになる(イラスト:なかがわ みさこ)
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 デジタル・サイネージとは,家庭の外に設置されたディスプレイに広告の映像を流すしくみのこと。電車のドアの上,タクシーの車内,ビルのエレベータやエントランス・ホール,コンビニエンス・ストアのレジ前といった場所で見かけたことがあるだろう。

 流れる映像は様々で,テレビ・コマーシャルと同様のもの,番組形式になっているもの,ニュースや天気予報を交えたものなどがある。会場内でイベントの開始予定を伝えるといった,告知といえる内容を流す場合もる。

 数ある広告メディアの中でデジタル・サイネージは,「設置場所はポスターに近く,しくみはテレビに近い」存在と言える。

 ディスプレイの設置場所は,自宅よりも広告する商品の売り場に近いところになる。そのため,「近くに来ているので売り場に足を運ぼう」「このあたりに売り場があることを覚えていた」など,ユーザーの購買意欲が下がりにくい環境で商品を宣伝できる(図1)。この特徴はポスターと共通しているが,映像を活用するのでユーザーの目を引きやすい。

 デジタル・サイネージが注目されるようになってきた背景には,電子機器の進化,メディアの多様化といったいくつかの側面がある。例えば,ディスプレイは大型,薄型で高精細の映像を映し出せるものが使われるようになってきた。しかし今後の発展に欠かせないのは,やはりネットワークである。

 広告を流すディスプレイは以前からあり,その多くは“スタンドアロン”で使われてきた。通信機能を持たず,CD-ROMやUSBメモリーなどの外部記憶媒体を使って人手で広告映像を入れ替えていたわけだ。これに対してネットワーク化されたデジタル・サイネージは,ディスプレイに通信機能を持たせて映像配信システムとつなぎ,「いつどのような映像を再生するか」を定義した編成データに沿って広告映像を再生する。

 スタンドアロンのディスプレイは映像の配信に多くの時間がかかるため,複数を束ねてメディアとして扱うのは難しい。これをネットワーク化すると,(1)複数の場所で宣伝・告知映像を同時に流せる,(2)柔軟かつリアルタイムな宣伝・告知ができる,(3)映像を見るユーザーとの双方向通信が可能になる──というメリットが生まれる(図2)。つまり広告を出す企業にとっては,広告メディアとしての魅力が増すことになる。例えば,「若者が多そうな繁華街を対象に,新商品発売の予告を流し,商品のスペックや発売日が変わったら差し替えられるようにしておく。そして予告を見たユーザーの反応も見る」という宣伝が可能になる。

 ネットワーク化は,広告の映像を見るユーザーにもメリットをもたらす。ディスプレイの設置場所に応じた情報を,最適なタイミングで得られるようになるからである。例えば,街中に置かれた同じディスプレイであっても,平日の昼間にそばを通りかかった人は近辺のショッピング情報を,週末の夜間に通りかかった人はグルメ・スポットの情報をそれぞれ得られるといった具合である。