無線技術を使って商品や箱などを識別するための小さなタグのこと。バーコードよりも記録できる情報量が多く、特に物流センターで実用化が進んでいる。

 物流センターを動き回る出荷前の商品や様々な商品を搭載した箱は、一つひとつがどのようにして識別されているのでしょうか。以前なら、それぞれにバーコードを張り付けてセンサーで読み取り、個体を認識するのが一般的でした。

 そうしたバーコードに代わる新しい認識方法として、現在は「無線ICタグ」の実用化が進んでいます。小型のICチップを使って認識装置と無線通信しながら識別するものです。非常に小さな無線ICタグを識別したい対象に個別に取り付け、無線で一斉に読み取っていきます。英語名を直訳すると「RFIDタグ」ですが、日本では無線ICタグと呼ぶことが多く、単にICタグと呼ばれることもあります。

効果◆商品の識別に使う

 生産情報や流通加工情報といったサプライチェーン・マネジメント(SCM)における商品のトレーサビリティーを確保するのに、無線ICタグは打ってつけのツールと言えるでしょう。光学式センサーを使うバーコードと違って、センサーの前をどんな角度で通過してもICチップの中の情報を読み取れるうえに、汚れたり破れたりして読み取れなくなる危険性が少ないのが特徴です。ICチップなので記録できる情報量も多くなります。

 ただし、無線ICタグは1個が数十円と高価だったため、数年前までは議論だけが先行していました。ところが、今は単価も下がり、まずは物流センターで使われるパレットやケースの識別を筆頭に利用が進み出しています。世界でもいち早く、2005年に無線ICタグを採用した米ウォルマート・ストアーズは、既に物流現場で効果を確認しつつあります。

 無線ICタグの究極の姿は、識別したい商品すべてにICチップを取り付けて、個体の情報を1つずつ認識することです。ロット単位ではなく、1個単位で物が動いた情報を記録できるようになるので、生産管理や物流管理、販売管理の仕組みを大きく変えられる可能性を秘めています。食品や日用品に無線ICタグが付くのは当分先の話ですが、それが実現すれば、買い物したかごの中身をスキャンするだけで合計金額が分かったり、売り場の棚をスキャンすると在庫数や品切れが一発で分かったりするような便利な時代が本当に来るのです。

事例◆100%近い出荷精度を達成

 医薬品卸の東邦薬品は2006年末から物流センターで使う商品を入れるかごに無線ICタグを取り付けてかごを識別し、商品のピッキング間違いを防止しています。ピッキングすべきかごが流れてくると無線ICタグと連動して光る仕組みです。商品の出荷精度は99.999%まで高まり、100%の月まで出ています。