従業員が仕事や職場環境に満足しているかどうかを測る指標。顧客満足度にも強く影響するといわれる。アンケートなどで定量的に把握し、改善を図る企業が増えている。

 「ESなくしてCSなし」というスローガンをご存じですか。顧客満足度(CS)の向上は、企業の競争力強化に不可欠なものですが、そのCS向上に大きな影響を与えると考えられているのが「従業員満足度(ES)」です。自らの働く環境に満足し、やりがいを持って仕事に取り組める風土が醸成されて初めて、社員は顧客へのサービス向上に取り組む意欲を持てるという考え方です。特に、人手不足に悩む小売業や外食産業などではESを高める職場作りに取り組むことで、人材獲得につなげようとする動きも見られます。

効果◆課題を浮き彫りに

 こうした企業側のニーズを受け、調査会社やコンサルティング会社などがES診断のアセスメントサービスを提供しています。社員へのアンケートやインタビューに基づいて、企業全体や各組織のESを定量的に把握したデータを、改善すべきマネジメント課題の優先順位付けに使う事例が増えています。こうした調査データを他企業と比較することもできますし、継続して調査することでESの時系列的な変化を観察し、着実に進化しているという実感を持たせることでモチベーション向上に役立てる効果もあります。

 ESを構成する要素には、報酬や労働条件、福利厚生制度などが挙げられますが、近年はこうした制度面の要素に加え、働きがいや達成度、成長感といった社員の心理面にも注目が集まっています。特に組織への貢献感や組織の人たちとの仲間意識などを総称した「エンゲージメント」は、ES向上に大きな影響があるとみなされ、米国に続き、日本でも認知度が高まっています。

事例◆もの言える風土を作る

 ESを向上させて組織を活性化し、業績向上にもつなげていこうとしているのが、自然化粧品ブランド「ザ・ボディショップ」を展開するイオンフォレスト(東京・千代田)です。同社ではかつて、業績の低迷や成果主義に基づいた人事制度の導入などにより、社員が「縮み志向」に陥って自分の意見を言わなくなり、働く意欲が低下していました。

 コンサルティング会社の組織風土診断でこうした問題に気づいた岩田松雄社長らは、人事制度の改善などに加え、風通しがよく、社員が会社の方向性や業務の問題点などについて自由に発言できる風土の醸成に努めました。例えば年2回の経営方針説明会では、参加した全社員がイントラネットで経営や事業の方針を評価します。こうしてフィードバックされた意見は全社員に公開され、経営陣はこれらの意見を基に経営の改善に取り組みます。こうしてESの改善に取り組んだ結果、CS向上にも効果が表れています。