非鉄金属のうち,埋蔵量が少なかったり採取が難しいなどの理由で,生産量や流通量が非常に少ないもの。国際的な定義はないが,日本では経済産業省がプラチナやニッケルなど31種類の金属をレアメタルに指定している(図1)。

 生産量は少ないものの,今やレアメタルは自動車やエレクトロニクスなどの基幹産業に欠かせない金属になっている。例えばネオジムはハイブリッド自動車の動力モーターやハードディスクの磁性材に, コバルトは携帯電話の充電池の材料に,プラチナは自動車の排ガス浄化装置に使われている。鉄が「産業のコメ」といわれるのに対して,レアメタルは「産業のビタミン」とも呼ばれる。

 ここ数年,レアメタルの国際市場価格が軒並み上がっている。2002年から2007年までの5年間で, ニッケルは約8倍, ネオジムは約6倍, タングステンは約4.7倍, プラチナは約2.5倍に価格が上昇した。新興国の台頭で, 自動車や携帯電話などの生産量が急速に増えて需要がひっ迫しているだけでなく, 中国やロシア, アフリカといった資源産出国が, レアメタルの生産や輸出を制限したり, 自国内での需要を優先する政策を取り始めたことが大きい。

 世界の産出シェアをみると,中国はレアアースの93%,タングステンの90%を占める。また南アフリカは,プラチナの78%,クロムの43%を産出する。このように産出国が一部に限定されると,消費国は産出国の生産計画や戦略に大きく左右される。実際に,中国は2006年から現在までに金属原料の輸出関税を4回にわたって引き上げ, 南アフリカもレアメタルの国際価格の上昇に合わせて課税額を増やす制度を検討している。

 こうした国際情勢の中, 日本政府も産業競争力を維持する狙いから, レアメタルの安定供給確保に乗り出している。資源外交によってレアメタルの供給源を多様化したり,電子機器などレアメタルを含む使用済み製品のリサイクルを推進したり, レアメタルの備蓄を増やしたり代替材料を開発する,といった取り組みがある。

 中でも,使用済み製品のリサイクルは, レアメタルの価格を安定させるほか,鉱山開発による環境破壊を抑える効果もある。液晶パネルの電極材に欠かせないインジウムは, 2002年から2005年までの3年間に, 国際価格が12倍に跳ね上がったが, 現在はピーク時の半値ほどに落ち着いている。非鉄製錬会社がリサイクル能力を増強し, 国内需要に占める再生品の割合を6割まで引き上げた結果, 価格が安定した。

図1●経済産業省がレアメタルとして指定している31種類の金属
レアアース(希土類)は化学的な性質が近い17元素の総称。したがって,レアメタルは元素の数としては47になる